ころんの大阪滞在記
作中の人物は架空の人物です。
ゆるゆるオフザケ作品なので、どうぞ寛大なお心でお読みいただけたらと思います。
新大阪駅三階、中央コンコースにある千成びょうたん。新幹線乗り場から降りてきたころんは、そこで待つひとりに「こいつだな」と目星をつける。
ズカズカ近付いていくと、ぼへ〜っと宙を見るその人物が、はっところんに視線を向けた。
「ころんちゃん?」
「そうそう! モカちゃんだよね」
ころんのお団子頭に目をやってから、モカがイメージ通りだと笑った。
「ころんちゃん、どっか行きたいとこある?」
とりあえずの自己紹介を終えてから、モカがころんに尋ねる。
「えっ? モカちゃんが案内してくれると思ってなんにも考えてないけど」
「そうなん? 大阪ってなんでもあるけどなんもないから。これってとこないねんなぁ」
困り声のモカに、ころんはう〜んと考える。
「じゃあお腹空いたからなんか食べたい!」
「わかった。なんにする?」
「大阪らしいのってなにかある?」
質問に質問で返され、モカもう〜んと考える。
「らしいゆうたら、たこ焼き、お好み焼き……」
「関東と味って違う?」
「一緒一緒。おうどんはちゃうかな」
「じゃあうどんにしようかな」
「おうどんやったらその辺になんぼでも店あるけどな」
「モカちゃんがよく行くとことかある?」
「私? はな◯うどん」
「香川じゃなかった?」
「そうやねんけどな。大阪のうどん屋さんゆわれてもどっこも思いつけへんもん」
じっとモカを見るころん。
「そうなんだ」
じゃあ、と目についたうどん屋に入ることにした。
「ほんで、どこいく?」
うどんをすする合間にモカが尋ねる。
「さすがに万博は今から無理やし、赤と青のアイツなお土産はその辺で買えるし。あと大阪ゆうたらユニバとか?」
「混んでるところはイヤ」
きつねのお揚げをモグモグしてからころんが答える。
「動物園ももうキーウィおらへんからなぁ。あ、太陽の塔でも見に行く? 動かへんけど」
「見に行ってなにかある?」
「原っぱの向こうに立っとるだけやけどな。なんかイベントやってるかもしれんし、商業施設はあるけど」
「じゃあいいかな。ほかは?」
うどんのつゆを飲みきって、首を傾げるモカ。
「なんば行ってグ◯コの看板見たってしゃーないし、うめきたも店ばっかやしなぁ」
「どんなお店?」
「アンテナショップとか?」
暫し無言になるころん。
「ほか」
「海遊館はジンベイおるけど、万博行くんの通り道やから電車混んでるやろし、京都行くより遠いもんな」
ガタッと突然ころんが立ち上がった。
「そうだ! きょ……」
「ころんちゃん?」
「京都行こう、モカちゃん!」
ぱちくりとモカがころんを見返す。
「京都?」
「そう! 京都!」
フンスと言い切るころん。
見上げるモカが、そやなと頷いた。
「やったら京都水族館は? 私もまだ行ったことないねん」
「そうなんだ。なにかあるの?」
「オオサンショウウオのぬいぐるみ!」
そうと決まればと、ころんは急いで残りのうどんを食べる。
モカとふたりで新快速に乗るべくホームに向かった。
――ころんの大阪滞在時間は約三十分。
京都駅で新幹線を降りればよかったのだと気付いたのは、帰りの新幹線の中だった。
おしまい