RESTART
目を覚ますとそこは教室で、私は教壇に立っていた。
私はエンゲルスに電話する。
「エンゲルス、君はこの後耳かき・耳ふーASMRという商品を体験することになるだろう。そのサービスを提供している労働者を、スタローヴァヤでの私との食事会に連れてきなさい。質問はあるか?」
「承知した。成功を保証できないが構わないかね」
「あぁ。善処してくれ」
エンゲルスとの通話を終了し、私は目の前の三人の少女に資本論講義を行う。
「万国の中卒よ、勉強せよ!」
講義自体は同じだ。だが前回と違うのは、彼女らの話を聞くことだ。
「資本主義的生産を行う社会では、その富は、商品の巨大な蓄積のようなものとして現われる。その最小単位は一商品ということになる。従って、我々の資本主義的生産様式の考察は、一商品の分析を以て始めねばならぬ」
「一商品は、とにもかくにも我々の面前に存在して、その特質をもって、人間の様々な欲求を満足させて呉れる。 その欲求が、例え胃からであろうと、幻想からであろうとかまわない」
マルクスは少女達に問う。
「アグネスよ、君が資本主義社会で満たそうとする欲求は何だ?」
「私はアイドルだ。心の理論を理解したい。そのためにお金を使う」
「クラーラよ、君が資本主義社会で満たそうとする欲求は何だ?」
「私は憶質蝶に惹かれる。憶質蝶を買うために、憶質蝶の論考を読むためにお金を使う」
「トラウデよ、君が資本主義社会で満たそうとする欲求は何だ?」
「私は奈落で稼ぐためにお金を使う」
「トラウデよ、それは何の欲求を叶えるために取り組むのだ?」
「私は最低賃金で書類選考と面接が無い求人にしか通らない労働者なんだ。そんな私が最低賃金以上の収入を得るためには、奈落に挑む以外の選択肢が存在しなかった。欲求なんて無い。少しでも稼ぐためにできることをやっているだけだよ」
「せやか。であれば紹介したい人物がいる。講義が終わったら私と共にスタローヴァヤで食事をし、橋に向かうぞ。奴はちょうどその時間にそこで自殺するのだ。私と共に奴の自殺を阻止するのだ」
「私に利があるのなら構わないよ」
「君の人生が好転することを保証しよう。戦う準備をしておきなさい」




