黒軍が兵站破壊する
東側諸領が雇った傭兵集団、黒軍。国内全域で活動する組織だ。金を受け取り戦果を上げる稼業をしている。
エーレンシュタイン領の補給線を断ち切るために奇襲を仕掛ける。マルクスも巻き込まれた。
黒軍の構成員は、耳に相当する部分と臀部に相当する部分に、フサフサの毛が生えていた。
「耳......? 尻尾? まさかな......飾りか何かだろう......」
後方に引っ込んで、エーレンシュタイン領の騎士と黒軍の戦闘を眺める。
「......にしてはよく出来ている。色ツヤといい毛並みといい......まるで本物のようだ......」
黒軍の指揮官を見つけた。あちらもこちらに気づいたようだ。
「おや。見たことのある顔があると思ったら、マルクスくんではないか。まだ私有財産を没収するなどと吹聴して回っているのかな」
黒軍の指揮官が声をかけてきた。
「私を知っているのか」
マルクスが応じる。
「知っているとも。イェニー・フォン・ヴェストファーレンから、君の話を聞いたことがある」
黒軍の指揮官が応えた。
マルクスはそれを聞き、イェニー・フォン・ヴェストファーレンの情報を求める衝動に駆られた。
「イェニーは生きているのか」
「あぁ。生きているとも。右翼管理者ユピテルが、君への対抗馬としてヴェストファーレンを擁立したのだ。ヴェストファーレンは根源の幼女となって復活を果たした」
「根源の幼女?」
「あぁ。魔人の階級の呼び名だ。下級魔人、中級魔人、上級魔人と続く魔人の階級の最上位に位置する。それが根源の幼女だ。管理者に匹敵する力を有している」
「イェニーは私と敵対しているのか」
「あぁ。君の革命活動を妨害することが彼女に与えられた仕事だからね」
「黒軍の立場はどうなんだ?」
「我々は傭兵だ。どの派閥にも属さない。強いていえば、我々は我々の派閥に属する。ゆえに、君とは敵対することもあれば味方になることもあるだろう」
黒軍の指揮官は続ける。
「今回はエーレンシュタインの兵站を削ることが目的だ。君は雇われただけだろう。雇用主のために命を掛けて労働をするべきではない。早く避難したまえ」
マルクスは応える。
「残念だがそれはできない。勤務時間終了までは雇用主の命令に従わなければならない。私は賃金をもらうためにここに居るのだ」
黒軍の指揮官が応える。
「承知した。部下には君に危害を加えないように伝えておくが、流れ弾についてはそちらで自衛したまえ。それでは、健闘を祈る」
国軍の指揮官は、黒軍の後方へ去っていった。彼の名前を聞きそびれたが……まぁ、いいか。
マルクスは指示を受けるために偉い人のいる場所へと向かった。




