マルクス、エンゲルスと電話する
「エンゲルスと合流を図りたいのだが......できることは限られているんだよな」
私はセプターの説明書を思い出す。祝詞を解説するページで、個人情報を開示請求する祝詞が記載されていたはずだ。
「知恵・戦略・工芸の女神アテナよ、マイページを寄越せ。ブヌテュリニイ・パスパルト!」
正面にAR表示のインターフェイスが展開される。私の情報が羅列されている。
適当に操作していると、プラグインフォルダを見つけた。フォルダを展開すると複数のプラグインがリストされている。地図を見つけたので有効化する。
地図のウィンドウが追加された。
現在地を取得し、周辺に何があるのかを確認する。
「店が複数と馬車乗り場が一つ。残りは住居といったところか」
ブヌテュリニイ・パスパルトの他の機能を試す。
交友欄フォルダを見つけた。リストにはただ一人、フリードリヒ・エンゲルスの名前が表示されていた。エンゲルスを選択状態にしてから、通話ボタンを押下する。
『____カリカリ......カリカリ......。ふぅーーーーーーっ。気持ちいい......ですか? よかったです❤️』
衝撃を受けた。私は嘗て、労働の疎外論と価値の枯渇論に基づき、労働に革命を起こそうと運動を行なった。だがしかし、こんなところに答えがあったとは......。耳かき・耳ふーASMRとは、労働の疎外と価値の枯渇に抗い得る......革命的労働なのである。
私はエンゲルスに感謝を伝える。
「ありがとうエンゲルス。一度目の人生で頓挫した革命に再度取り組もうと思えたよ」
「それはよかった。君もこちらに来て体験するといい。我々は自閉症を自開症へと移行しなければならない。そのためには所与の概念における上部構造が必要なんだ。唯物史観は間違っていたんだ」
「その通りだ。だから唯物史観を改め、ヘゲモニー史観を提唱しようじゃないか」
「それはいい。この世界を冒険して、ヘゲモニー史観について執筆しようじゃないか。それを現実世界に持ち帰って、現実世界でヘゲモニー史観という書籍を出版しよう」
「素晴らしい。賛成だ」
「では君が来るのを待っているよ」




