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『クリスマスケーキと甘美な夢』

作者: 越後浪人

今回はPixivにアップロードしたものの、読者数が少なく、アカBANを喰らってまるまる消さなければならなくなり、Pixivの立て直しに際してパロディもの『だけ』を向こうにまとめるために掲載先を変えた『再掲もの』です。


ただ、この話のベースは筆者本人がしてきた経験の『複合体』です。

今年もクリスマスが来る。僕にとっては孤独なクリスマスが。

彼女もできない。クリスマスを過ごす友達もいない。そんなことが毎年のお約束。


僕は通信教育で製菓衛生師になるお勉強をしている。今日はスクーリングがあり、午前中は製菓理論、午後からは調理実習だった。


昼食はへぎそばと天ぷら。舞茸やカボチャ、エビが嬉しい。

製菓室へ行くと、先生曰く、『ガトー・オ・フレーズ』を作るという。


僕達がすることは卵を泡立て、スポンジの種を作ることから始まった。

往復運動に似た回転運動なのだけど、ホイッパーを使うので結構肘にくる。


このクラスは年齢層も性別も雑多だ。働きながら通信教育を受けていたり、大学に行きながらスクーリングをしている人もいる。


泡立ててバターを混ぜた生地は型に流されオーブンに入れられる。

空気の入った生地はオーブンの熱で膨らみ、やがて天を突かんばかりとなる。


型から外して粗熱を取っている間にスノーボールを作った。

粗熱の取れたスポンジはパレットナイフで半分に切られて、上半分は逆さまにして両方ともシロップを塗る。


生クリームも手で泡立てるので、肘にくる。7分立て、というけど5分立てまでがなかなか厳しい。

生クリームを塗って、高いイチゴを載せて。回転台に載せて、テッペンから塗って。


全体が塗れたら韓国のセンイルケーキになったけど、本当に腕の見せどころなのはここから先。

残りのクリームを気合で泡立てて、絞り袋で絞った。


テッペンには梵天、周囲には回転させて尻尾を伸ばした。

イチゴを載せたのはそれからだった。できたのは子供の頃、お母さんがよく作っていたイチゴのショートケーキ。


できたケーキの底にパレットナイフを挿して、ケーキ箱の受け皿に載せて、箱に入れて持ち帰る。

帰り際にアニメイトへ行きたいけど、今日はケーキをもっているからお預け。


帰りの列車はバッタンコシートに座れた。8両編成だから、座席数は多いけど、座るのはギリギリだった。


降りた後も生クリームが心配。乗り換えて作業場のクリスマス会まで来た。


『メリークリスマス‼︎』


僕はカフェスペースで迎えられた。手を洗って消毒して、ケーキを箱から取り出して。


『今日は彼からクリスマスケーキのプレゼントだ。皆んなで食べよう』


恰幅のいい代表氏が音頭を取る。


『ありがとうございます‼︎』


僕はそう返した。


30人くらいの会なので、調理実習のケーキはすぐになくなってしまった。

夕食を食べていない僕はオードブルを摘む。それ自体はスーパーで頼んだものだが、勉強疲れに助かる。


『野菜も食べるんだぞ』


既に就職している先輩が僕達にそう諭す。

実際、ツナとキャベツやレタスのサラダに漬物まで支度されている。


しかし、寒い日に1番嬉しかったのは豚汁だった。豚肉の他に豆腐、玉ねぎ、ゴボウ、じゃが芋、大根、ニンジン、コンニャク。出汁は出汁の素だと思うが豚肉の旨味が効いており、ネギも載っている。


効果的に野菜が食べられて、非常に助かる。


クリスマスソングを歌い、或いは職員氏が本業で歌っている曲を聞き、時間は過ぎた。

時刻は20時だろうか。僕達はようやく解散し、自宅へ帰る人は自宅へ。会員向けの寮や下宿へ帰る人は寮や下宿へ帰った。


僕は寮生なので、バスで寮へ帰った。


今日のお風呂は草津の入浴剤。擬似的とはいえ、温泉の成分が身に沁みる。

入浴中にコタツで温めた布団に入り、僕は寝た。


夢の中では僕は学生だった。高校のとき、ラグビーでなかなかトライを取れず、苦い思いを強いられてきた。


大学の頃はアメフト部が羨ましかった。


僕が彼女と見ているのはアメフトの試合だった。彼女は美少女ゲームのヒロインである。体力勝負なのでなかなかタッチダウンが取れない。初めてのタッチダウンを取るのに15分掛かっただろうか。


「今日は辛うじて勝ったね」

試合後、僕は彼女にそう言った。


「守りが固かったよね」

彼女は僕にそう微笑んだ。


僕と彼女は制服デートをしている。観戦した後、夕食を食べてビジネスホテルに入った。

ここのお湯は温泉地から運んできたお湯を張っており、入湯税150円も払っている。


「着替え、持って来た?」

「勿論だよ。佳純さん」

思い出した。彼女のいるゲームは『学園ライフ』というタイトルで、18禁版もあったんだった。今年の夏、アニメで放送していたんだよな〜。


なお、彼女のフルネームは中村佳純という。焦茶のショートボブで胸は87センチのFカップ、ウエストは58センチで身長は163センチと女性にしては若干長身である。


彼女は遠出が好きなので、アメフトの遠征と抱き合わせになったのか。

今夜は彼女と2人っきり。本当ならリアルの学生だった頃に体験したかったことだ。


佳純さんは僕に背中を向けさせて制服のボタンを外し、ブラウスを脱ぐ。彼女は黄色サテンの下着を着けていたけど、僕はそれを知らない。


『こっちを見ていい』と、言われたときには既に浴衣に着替えた後だった。

ツインルームなので別途も別だった。


そんな僕に彼女から『おやすみなさい』のキス。カーテンの中に入って窓の外を見ればクリスマス商戦も最終日だった。


翌朝。佳純さんから『おはよう』と、声を掛けられる。

僕も応えて、2人で朝風呂。ここのお湯は『美肌の湯』だった。


朝食はバイキングで豚汁まで付けてくれる。僕はタレカツ丼を食べようとしたけど、佳純さんに止められた。

チェックアウトしたのは9時過ぎだ。


僕と佳純さんの甘美な時間は帰りの新幹線で途切れた。


夢から覚めた僕は食堂に出て、寮の同胞と朝食を食べる。

甘美な夢を見た後はいつもの納豆がいつもより美味しい。


今日のおかずは洋風にスクランブルエッグとハムで、サラダはツナとトウモロコシの載ったものだった。

汁物はミネストローネである。


朝食を食べた後、荷物を整えていつもの作業所へ出向く。今日は居場所デーなのだ。


『今日はクリスマスイブだったな』


独り者の集団だけど、僕達は必ず夢と希望を取り戻す。

この後、筆者には『2次元妻』ができましたし、製菓衛生師の国家試験に合格して新潟県知事から免許が下りました。

また2024年中に『新潟県障害者芸術文化祭』にて短歌部門の県知事賞を受賞しております。

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