自慢と相談、恋の温度差
朝から胸の高鳴りが止まらない。
ベッドの上でごろごろしながらスマホを握りしめ、昨日の出来事を思い返していた。
――すばるさん、かっこよすぎる……!
あの優しさ、力強さ、そして最後の「君はかわいいから」って一言――。
思い出すだけで顔が熱くなる。
「これは……奈緒に話さずにはいられない!」
勢いよく起き上がると、あゆみはスマホを手に取ってメッセージを打ち始めた。
『今日、時間ある?』
すぐに奈緒から返信が来る。
『あるよー。どうしたの?』
『とにかく会いたい!』
いつものカフェで奈緒と向かい合う。
カフェラテを手にした奈緒が、不思議そうにあゆみを見ていた。
「で?そんなに慌てて何があったの?」
「あのね……聞いてよ!」
身を乗り出すようにして、あゆみは昨日のデートの話を語り始める。
水族館での楽しい時間、そして――最後のおんぶ事件。
「でね!最後、すばるさんがひょいって私をおんぶしてくれたの!」
奈緒の目が一瞬大きく開く。
「……え、おんぶ!?何それ!少女漫画かよ!」
「そうなの!まさにそんな感じで!」
あゆみが興奮気味に言うと、奈緒は思わず吹き出した。
「えー、なにそれ、星宮先生やるじゃん!で、どうだったの?おんぶされて。」
「あのね……なんか、安心感がすごかったの。」
あゆみは少し恥ずかしそうに視線を下げる。
「でもね!ただの筋トレアピールもされて!」
「えっ、なにそれ!?気になる!」
奈緒がテーブルを叩きそうな勢いで食いついてくる。
「あのね、『実は筋トレしてて、こんなに簡単に持ち上げられるんだ』って。もうなんか、それが可愛くて!」
「ははは!それさ、アピールなのか天然なのか分かんないね。」
奈緒は笑いをこらえきれず、顔を手で覆う。
「でも、めちゃくちゃ優しいね。そんな人、なかなかいないよ。」
「うん……。ほんとにすばるさん、ずるい。」
あゆみの顔がほんのり赤く染まっていた。
「いいなぁ!」
奈緒はあゆみの肩を軽く小突きながら笑う。
「私も恋してぇわ!あんたばっかずるいっての!」
「あはは……奈緒だっていつか素敵な人、できるよ!」
「そりゃそうだけどさ!なんかこう……うらやましすぎてムカつく!」
そう言いながら笑う奈緒につられて、あゆみも声を上げて笑った。
一方その頃、すばるは自宅のソファに腰を下ろしながらスマホを耳に当てていた。
通話相手は、親友のゆうきだ。
「なぁ、ゆうき……昨日のことなんだけどさ。」
少しためらいながら話し始めるすばる。
「どうした?珍しいな、相談なんて。」
ゆうきの軽い声がスピーカー越しに響いてくる。
「いや、その……昨日、デートの途中でさ、あゆみちゃんをおんぶしたんだよ。」
「おんぶ!?マジかよ!」
ゆうきが思わず吹き出す音が聞こえる。
「いや、違う!足が痛そうだったからさ、気を遣わせたくなくて……。」
「気を遣わせたくなくて……おんぶ?」
ゆうきが思わず笑いをこらえる気配がする。
「いや、あの場ではそれが自然だったんだよ。でも……やりすぎだったかな?」
「いやいやいや、おんぶとか……お前ほんとに少女漫画かよ!」
「うるさい!」
「いやでも、いいじゃん。むしろポイント上がっただろ。」
「……そう?」
「そうだよ。お前が優しいのは分かるけど、あゆみちゃんだって、おんぶされて悪い気はしてないだろ。逆に感謝してるって。」
「そうかな……。」
「そうだって。むしろ、そうやって自然に動けるところがいいんじゃないの?」
ゆうきの言葉に少しだけ表情が緩むすばる。
「まぁ、確かに自然に動いちゃった部分はあるかもな……。」
「ほら見ろ。そんなに気にすんな。」
「……ありがとう。」
電話の向こうで、ゆうきがふっと笑った気配がした。
「つーかさ、ほんとにお前ら漫画の中のカップルみたいだな。おんぶとか、ウケるわ!」
「お前なぁ……!」
結局、軽く笑い合いながら電話を切ったすばる。
心の中で、少しだけ昨日の自分に自信を持ち直したようだった――。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
初デート編、いかがでしたでしょうか?
水族館デートや甘いやりとり、そしてすばるとあゆみの距離が少しずつ近づいていく様子を楽しんでいただけたなら嬉しいです
すばるの「少年モード」や、あゆみの「初々しさ全開」の反応に、思わず微笑んでもらえていたら作者として大成功です!
初デートは特別なもの。そのときの高鳴る気持ちや、ちょっぴり恥ずかしいけれど嬉しい瞬間を、これからも大切に描いていきたいと思っています。
引き続き、彼らの日常や未来を一緒に見守っていただければ嬉しいです!
次回は子どもたちのとある大作戦の予定です、ぜひお楽しみに




