表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/17

先生の可愛さ、少年モード全開!

 駐車場に到着すると、すばるさんは車を降りながら一つ伸びをした。

 そして、施設の方へと歩き出すとき、どこかウキウキした様子で振り返る。


「いやぁ、実はさ、ここ一度来てみたかったんだよね。」


 ――え!?


 普段、どこか余裕たっぷりな先生が、なんかちょっと子どもっぽい?


「えっと、ここ……ですか?」

 少し驚きながら聞き返すと、彼はニッと笑って頷いた。


「そう。仕事とか家のこととかでなかなかタイミングがなくてさ。でも今日、こうしてあゆみちゃんと一緒に来られて良かったよ。」


 ――うわぁ……なんか……かわいい!?


 普段の落ち着いた感じとは違う、はしゃいでるすばるさんを見るのはなんだか新鮮で……少しドキドキする。

 いや、さっきまでの余裕たっぷりな彼と同一人物だなんて、にわかには信じられない!


「なんか、すばるさんがそんな風に言うのって意外です。」


「そう?僕だって普通に行きたいところあるよ?」


 ――それがまた!そんな素直に言っちゃうところがかわいいんだってば!!


 心の中で密かに叫びながら、私は彼と並んで施設の中へと歩いていった。


 施設内に足を踏み入れると、すばるさんはキョロキョロと周囲を見回しながら歩いていた。

 その視線がある一点で止まったかと思うと――。


「あそこ行こ!」


 元気よく指をさした方角には、大きなボールのオブジェと、かわいらしいマスコットが見える。

 まるで夢中になった子どものような笑顔を浮かべるすばるさんに、私は少し驚いた。


「知ってる? あれ!」


「え?」


「ボールで捕まえるゲームのやつ! あれ、僕、好きだったんだよー!」


 ――え!?先生が……!?


 目を輝かせながら、興奮気味に話す彼を見て、なんだか不思議な気分になる。

 普段は落ち着いた大人のイメージが強いのに、今はただの“はしゃぐ少年”そのものじゃん!



 そんな彼の様子を見ていたら、私までなんだか楽しくなってきた。

「じゃあ、行ってみましょうか!」

 思わず笑顔で答えると、すばるさんも満足げに頷いた。




 施設内を一通り堪能したすばるさんは、いつのまにか大きなぬいぐるみを抱えていた。

 ――いや、それどうやって手に入れたの!?

 心の中で思わずツッコミを入れつつ、その光景があまりにも自然すぎて笑ってしまいそうになる。


「すばるさん、それ……。」

 思わず声をかけると、彼は軽くぬいぐるみを持ち上げながら、にっこりと笑った。


「これ、あゆみちゃんに似合うと思ってさ。」


 ――え、なにそれ!?


 心臓が一気に跳ねるのを感じた。

 いやいや、待って待って!なんでそんなことさらっと言えちゃうの!?


「え、えっと……私に?」

 慌ててそう聞き返すと、すばるさんは少し首を傾げながら言った。


「うん。なんとなくね。」


 ――え、ずるい!!それ絶対キュンとするやつじゃん!!


 思わず顔が赤くなっていくのを感じながらも、私はぬいぐるみをじっと見つめた。


「……かわいいです。ありがとうございます。」


「荷物になるから、あそこのロッカーに預けておこうか!」

 すばるさんがロッカーの方を指差しながら、にっこりと笑う。


 ――ほんと、うまいなぁ……。


 その笑顔を見ながら、自然体でいてくれる彼に改めてキュンとしてしまう。

 ふと、ぬいぐるみを抱えたままのすばるさんをじっと見つめてしまった。


 ――なんか、いいな。こんな時間がずっと続けばいいのに……。


 そんなことを考えていると、ふと視界の隅に大きな看板が映り込んだ。


「あ!すばるさん!あそこ、水族館ですよ!」


 勢いよく声を上げて指を差すと、すばるさんもそちらを見やる。

 青と白で彩られた看板の下に、たくさんの人々が集まっている。


「あ、ほんとだ。」

 すばるさんの表情が少し明るくなった。


「行きましょうよ!きっと楽しいですよ!」



「じゃあ、行こうか。」

 すばるさんがそう言い、自然な流れで私たちは水族館の入口ゲートに並び始めた。


 ――あれ?もしかして、あそこの受付で入場券を買わないといけないの、気づいてないのかな?


 列に並びながら、私は彼の背中を見つめる。

 ――え、なんか抜けてるところもあるの?かわいいじゃん!


「教えてあげないと。」

 そう思い、勇気を出して声をかけようとした。


「あの、すば――」


 言いかけた瞬間、私たちの順番が回ってきた。

 すると、すばるさんは無言でスマホを取り出し、受付のスタッフに画面を見せる。


「これで。」


 ピッと鳴り、あっという間にゲートが開いた。

 ――ええええええ!?


 驚きすぎて声が出ない。すばるさんは何事もなかったかのように振り返り、にっこりと笑った。


「さ、行こうか。」


 ――ちょっと待って!?何やってるの!?準備してたの!?


 そんなことを考えているとどこか弾むように歩いていくすばるさん。


「ちょっと待ってくださいよ。」


 慌てて追いかけると、すばるさんが軽く笑いながら言った。


「いや、ここに行きたいなーって思って、実は先週くらいからチケット買っておいたんだよ。」


「……え?」


「一緒に水族館行きたいなーって思ってさ。だから先に買っちゃった。」


 ――かわいすぎかよ!!


 私の心の中で何かが爆発した。

 ――私と水族館行くの、楽しみすぎでしょ!?じゃあ、カフェで言ってくれたら良かったのに!


「すばるさん……。」


 思わず口に出そうになるけど、彼が嬉しそうに前を歩いているのを見て、それ以上は何も言えなかった。

 ――ほんと、こういうとこ、ずるいんだから……。


 胸がじんわりと温かくなる感覚を抱きながら、私は彼と一緒に水族館の中へと足を踏み入れた――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ