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一方そのころ

 仕事を終え、子どもたちと帰宅した僕は、リビングでれんとりお、二人の子どもと一緒にミニカーで遊んでいた。

「パパ、ここ!トラックをここに停めて!」

「了解!ここで荷物を下ろすんだな?」


 そんなほのぼのとした時間を過ごしていると、玄関のチャイムが鳴った。


「はーい!」

 りおが勢いよく飛び出していく。扉の向こうから聞こえた声は――。


「頼まれた物、持ってきたぞー!」


 ゆうきだ。


「ゆうきおじちゃん!」

 りおは全力で抱きつきに行く。


「うわっ、おいおい。元気だな。ていうかまだおじちゃんじゃねぇよ。」


 荷物を片手に持ちながら、なんとかバランスを保つゆうき。

 後ろかられんが冷静に歩いてきた。


「ゆうきおじさん、荷物ありがとう。」


「お、れんもちゃんと礼を言えるようになったな。でもな…。」


「?」

 ほめられている気はするけれど、続く言葉が分からずれんは首を傾げる。


「まだおじさんじゃないぞー!」



 ゆうきは無造作にれんの頭を撫でる。


 大型犬を洗ってみるみたいな手つきだなと、ぼくは少し笑ってしまった。


 リビングに入ってきたゆうきが、テーブルに紙袋を置く。

「これ、頼まれてたやつな。ミニカーで遊ぶときに使う追加パーツ。」


「助かるよ、ありがとう。」

 僕は手を伸ばして紙袋を受け取る。


「ま、どうせ暇だったしな。それより――」


 ゆうきが何か言いかけた瞬間、僕は意を決して言葉を口にした。


「ゆうき、相談があるんだ。」



「……どした?」



 唐突な一言に、ゆうきが少し怪訝そうな顔をする。

 僕は真剣な顔で続きを話し始めた。


「30歳と21歳って、ほぼ犯罪だよな?」


「……は?」


 ゆうきの動きが一瞬止まる。でも、僕はそんなこと気にせず言葉を続けた。


「30っておっさんだろ? おっさんとデートって楽しいのかな? それに、どこに連れて行けば自然かな? いや、もしかして『ロリコンだー!』って通報されるんじゃ――」


「ちょ、ストップ! ストップストップストップ!!」


 ゆうきは大きく手を振りながら僕の言葉を遮った。

「お前さ、どんだけ不安抱えてんだよ! 次々にうるさいんだけど!」


「だって、よく考えたら僕、30だよ?」

 神妙な顔でそう答える僕に、ゆうきは大げさにため息をつく。


「いやいや、30はおっさんじゃねぇし、21はロリじゃねぇよ!」

 呆れたように肩をすくめながらも、ゆうきはニヤッと笑った。


「つーか、普通にカップルじゃん。それに、あゆみちゃんもお前とのデート楽しみにしてるだろ?」


「……そうなのかな。」


「そうだよ! で、どこ行くつもりなんだよ?」


「そこが問題なんだ。どこに連れて行けば自然に見えるか分からなくて――」


「またそれかよ! 考えすぎだって!」

 ゆうきは僕の肩を掴み、軽く揺さぶる。


「好きそうなところでいいんだよ!あゆみちゃんに喜んでもらえそうな場所を選べば、問題ねぇから!」


「……好きそうなところ。」


「それと、考えるのも良いけど、ちゃんと連絡はとっているのか?

 お前めんどくさがりだから…。」


「失礼な!ちゃんととってるよ!」


 ぼくは送ったメッセージを自慢するように突き出した。


「『今度の休み、楽しみだね』って…。」


 おや?ゆうきが感動のあまり震えているじゃないか。

 ぼくは少し勝ち誇った気分になった。


「いや、シンプル!すごくシンプル!いいんだよ?いいんだけど!もうちょっと何かいれたげろよー!」


「え!?」


 僕が驚くと、近くで遊んでいたれんとりおがこちらを見た。


「パパ、ゆうきおじちゃんに叱られてる!」

「パパ、がんばれー!」


 子どもたちの声援(?)を背に、どうしたものかと僕は考えていると


「まぁ、でも楽しそうで良かったよ。」


 とゆうきはどこか安堵したような表情だった。


 その目を見たぼくは


「いつもありがとう、ゆうき。」


 といつのまにか小さく呟いていた。

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