元気づけ大作戦
夜遅く、あゆみちゃんがすばるさんと一緒に帰ってきた。
玄関のドアが静かに開く音がして、子どもたちはリビングの隅に隠れた。
「ただいまー。」
すばるさんの声が玄関に響き、あゆみちゃんも小さな声で「ただいま」と返す。
その瞬間、リビングの光景に気づいたあゆみちゃんの足が止まった。
風船や手作りの飾りで彩られた部屋。
テーブルの上には、綺麗に並べられたクッキーと、幼い文字が書かれた一枚の手紙が置いてある。
「これ……?」
驚いた顔で一歩前に進んだあゆみちゃんに、隠れていた子どもたちが勢いよく飛び出した。
「じゃーん!」
「ぼくたちからのプレゼントだよ!」
れんとりおが手紙を手に走り寄り、あゆみちゃんに差し出す。
彼女は驚きながら手紙を受け取り、小さな文字をじっと見つめた。
「おつかれさま。いつもがんばってるあゆみちゃん、だいすき!」
その言葉に、あゆみちゃんの手が震えた。
ゆっくりと手紙を胸に抱きしめ、目元を押さえながら呟く。
「ありがとう……本当にありがとう。」
その声は小さかったけれど、震えるほどに優しかった。
子どもたちはそんなあゆみちゃんを見て、満足げに微笑む。
「元気出た?」
りおが小さな手であゆみちゃんの手を握りながら聞くと、彼女は微笑みながら頷いた。
「うん。すごく元気になったよ。ありがとうね、れんくん、りおちゃん。」
すばるさんはその様子をリビングの入口から見守り、ふっと微笑んだ。
「君たち、やるじゃん。」
「でしょ!」
れんが胸を張ると、すばるさんは少し笑いながら子どもたちの頭を撫でた。
キッチンでは、ゆうきと遥香がその様子を静かに見守っていた。
「なんか、いいね……こういうの。」
ゆうきがポツリと言うと、遥香が微笑みながら頷く。
「うん。本当にいい子たちだよね。それに、すばるも、あゆみちゃんも。」
「だよな。あいつ、あんな風に幸せそうにしてるの、なんか感慨深いわ。」
「ふふっ、そうだね。でも、ゆうきだって、私に幸せそうな顔してるよ。」
「おい、急に何言ってんだよ。」
照れたように頭をかくゆうきに、遥香は楽しそうに笑った。
その夜、リビングには柔らかな灯りと笑い声が溢れていた。
特別な飾りも何もないけれど、そこには間違いなく、誰かを想う優しさが満ちていた。
――子どもたちの「元気づけ大作戦」は、大成功だった。
(完)




