大作戦:Phase1
ある夜、あゆみがリビングのテーブルに向かってノートを開いていた。
少し疲れたような顔をしているのが気になったすばるは、そっと声をかけた。
「ねぇ、最近ずっと勉強してるけど、たまには息抜きしないと倒れちゃうよ?」
あゆみは顔を上げて、小さく微笑んだ。
「大丈夫ですよ。でも……ありがとうございます。」
その表情が、本当に大丈夫と言っているようには見えなかった。
「明日、ちょっと出かけない?どこかで気晴らししようよ。」
その言葉に、あゆみは目を丸くした。
「……いいんですか?」
「もちろん。気分転換しなきゃ、効率も悪くなるしね。」
すばるがそう言うと、彼女は少し嬉しそうに頷いた。
でも、ふと頭をよぎったのは子どもたちのことだった。
二人を連れて行くのは難しいし、かといって置いていくのも気になる。
「いや……子どもたちがいると、かえって大変かもな。」
そう呟いていると、すばるはふといい案が浮かんだ。
「そうだ、ゆうきに聞いてみよう!」
すぐにスマホを取り出して、彼に電話をかけた。
「もしもし、ゆうき?」
「お、なんだすばる。珍しいな、こんな時間に。」
「いや、ちょっと頼みがあるんだけどさ……。」
事情を簡単に説明し、子どもたちを預かってもらえないかお願いした。
「なるほどね。いいよ、俺と遥香で面倒見るよ。あいつ、子どもたち好きだからな。」
ゆうきの即答に、すばるは思わず胸を撫で下ろした。
「ありがとう、助かるよ。」
そして翌日、ゆうきと遥香が訪ねてきた。
「さぁ、子どもたち!今日は俺とお姉さんと一緒に楽しい時間を過ごそうぜ!」
ゆうきが両手を広げて笑うと、れんとりおが元気よく駆け寄った。
遥香も優しく笑いながら、「二人とも、今日はいっぱい遊ぼうね。」と声をかける。
子どもたちが無邪気に喜ぶ姿を見て、すばるは安心してあゆみちゃんを振り返った。
「これで心配いらないね。じゃあ、行こうか。」
あゆみは少し戸惑ったようだったが、すばるの手を取って、小さく微笑んだ。
――こうして、久しぶりの二人きりの時間を過ごすために出かけることができた。
一方そのころ――。
ゆうきと遥香、そしてれんとりおの「元気づけ大作戦」が密かに始まろうとしていた――。




