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恋する乙女、ファッションショー!

こんにちは!

今回は「すばるとあゆみの初デート編」をお届けします!


恋人として初めて迎える特別な一日。

水族館でのドキドキや、ちょっぴりハプニングありのほのぼのデート、二人の関係がますます深まる瞬間が詰まっています。


すばるの意外な一面や、あゆみの初々しい反応にも注目していただけると嬉しいです!

甘くて穏やか、でもちょっぴりキュンとする物語を、ぜひ最後まで楽しんでくださいね


それでは、どうぞ!

「先生と付き合えるなんて。」


 あゆみは、心の中でその言葉を何度も繰り返していた。

 信じられない。まるで夢みたい。

 でも、胸の奥がじんわりと温かくなるこの感覚――それだけは紛れもない現実だ。



 星宮すばる――高校時代の担任。

 けれど、あゆみにとって彼はただの教師じゃなかった。



 初めて恋を向けた相手。

 いや、あの頃の気持ちは恋というより憧れだったのかもしれない。

 教室の黒板にチョークを走らせている。そんな背中を眺めるだけで、十分だったはずなのに。


 それが今、こんなにも近くにいるなんて。

 まだ夢の中にいるみたいで、ふと現実に戻るたびに頬が熱くなる。


「僕と付き合ってほしい。」

 あの時の言葉が頭の中でリフレインするたび、胸がぎゅっと締めつけられる。

 満たされたような気持ちが溢れ出すのと同時に――


「あああ~~もうっ!」

 声にならない叫びを漏らしながら、あゆみは枕に顔を埋めた。


 どうしてこうも、頭の中が恋愛モード全開なんだろう。

 私、もしかしてめんどくさいタイプ……?


 そんな時、スマホがブルっと震えた。

 画面には「星宮すばる」の名前が表示されている。


「ふへへっ……」

 反射的に顔が緩む。さすがに、そろそろほっぺが痛い。スマホを開く指先が震えそうになるのを何とか抑えて、メッセージを確認する。


『今度の休み、楽しみだね』


 ――シンプル!

 でも、その一行だけで胸が甘酸っぱい感情でいっぱいになる。


「……って、こんなことしてる場合じゃない!」


 布団を跳ねのけて飛び起きたあゆみは、クローゼットの扉を勢いよく開いた。

 次々に服を引っ張り出し、鏡の前で体に当ててみる。


「白いブラウス……ピンクのスカート……淡いブルーのワンピース……」

 どれもイマイチ。


「これじゃ子どもっぽいかな?でも地味なのも嫌だし……」


 ぽつりぽつりと独り言を漏らしながらも、解決の糸口が見えない。

 ――よし、こういう時は奈緒だ。


『今日、話せる?』


 メッセージを送ると、すぐに返信が来た。

『いつものカフェで待ってて!』


「で、何をそんなに悩んでるの?」


 カフェに着くなり、奈緒はアイスティーを一口飲んでからあゆみに顔を向けた。

 あゆみは少しうつむきながら、ぽつりと答える。


「今度……先生と出かけるんだけど……何を着ていけばいいか分からなくて……」


 奈緒の目が一瞬見開かれる。


「先生って、あの星宮先生だよね?ほら、あゆみが『付き合うことになった』って言ってた!」


「うん……」

 恥ずかしそうに頷くあゆみに、奈緒は悪い笑みを浮かべる。


「じゃあ……デートじゃん!!」


「ちょっ、ちが――っ! ただのお出かけだもん!」

 慌てるあゆみの顔は真っ赤で、手が忙しなく動いている。


 奈緒はその様子を楽しそうに見ながら、肘をついて首をかしげた。


「ふーん。それで何を着ていくか悩んでると?」


「……うん。先生って先生じゃん?ほら、社会人だし、すごくかっこいいし……私なんて大学生でこんなだし……相応しいのかなって、思っちゃって……」


 言いながら、あゆみは自分で首を振った。

「って私、めんどくさいな!あーもう、どうしよう奈緒――」


 その声は少し震えていて、今にも泣き出しそうだった。

 奈緒は真剣な表情を浮かべた――と思ったのも束の間、次の瞬間大声で笑い出した。


「ははははっ! あゆみ、何それ!可愛すぎるんだけど!」


「な、なんで笑うのよ!」

 あゆみが不満そうに睨むと、奈緒は肩を揺らしながら続けた。


「いいんじゃない?そんな純粋無垢なところに先生は惹かれたんじゃない?」


「純粋……無垢……?」


「そう! あゆみが一生懸命悩んでるの、めちゃくちゃ可愛いじゃん!先生も絶対そう思ってるって!」


「そ、そんなの分かるわけないし……」


「いやー、恋する乙女って感じで最高だね!」


 奈緒の笑いに釣られて、あゆみも少しだけ笑顔を見せる。


「その感じ、絶対ちゃんと考えていないよね!」


「考えてる考えてる。それにあゆみは何着たってかわいいよ?安心しな?」


「だからからかってるでしょ!それー!」


 結局、奈緒が「やっぱり現場で見ないと分からない!」と言い出し、あゆみの家でファッションショーが開かれることになった。


「さ、次! 次の持ってきて!」

 奈緒は勢いよく手を叩き、クッションにふんぞり返る。


「どこの監督よ、それ! これでも結構頑張ってるんだから!」

 あゆみはクローゼットの中を必死に漁りながら叫ぶ。


「じゃあ次は白のブラウスにピンクのスカートでどう? あ、靴も合わせてみて!」

「……奈緒、楽しんでるでしょ。」


「当たり前じゃん! こういうの楽しいに決まってるでしょ!」


 呆れるあゆみをよそに、奈緒はニヤニヤとスマホを取り出して撮影を始める。

「ちょっと、写真なんて撮らないでよ!恥ずかしい!」


「あゆみ、可愛いから記念に撮っとかないともったいないでしょ!」



 奈緒とあれこれ悩んだ末に決まったのは、淡いピンクのワンピースに白いカーディガンだった。


「これなら大丈夫じゃない?」

 奈緒が自信たっぷりに頷くのを見て、あゆみはほっと息をつく。


 夜、奈緒にメッセージを送った。

『今日は本当にありがとう』


 服は決まったけれど、まだ少し不安が残っている。

 もう一度鏡を見ながら、小さく呟いた。


「……これでいいかな?」


 その夜、布団に潜りながら、あゆみはスマホを手に取った。

 届いていたのは星宮先生からのメッセージ。


『一日お疲れ様。楽しみにしてるよ』


 たった一行の文字に、胸がドキンと高鳴る。


「先生はどんな気持ちでいるのかな……」


 そっと目を閉じると、彼と過ごす初めてのデートがふわりと心に浮かぶ。

 布団の中で、小さな微笑みを浮かべながら――。



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