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物語が終わるまで  作者: わだん
1/2

別れの前日 朝

はじまり


文字数少ないですけど、

宜しくお願いします


 何だか、部屋がやけにがらんどうとしている。

 まあ。私がしたんだけど。


 しまえるものは片付けた。使ってきた家具には埃避けをかけた。残るは明日ベッドにも被せるのみ。

 思ったよりも大きくなった「手荷物」は机の下辺りに置いている。もう引出しの中の愛用品達も入れ終わった。

 私は、明日この家を出るために少し前から準備をしていた。

 14年前間、産まれ育ったこの家を出るために。


「何か…感慨深かねぇ~」


 ため息と共に心がもれていくようだ。

 しかし少ししんみりとしても、後ろから水を差すように母さんが言う


「ほらほら、おはようさん。そんでお疲れ様っ。もうやっとね、ぎりぎりまで時間が掛かったねえ!」

「あ、母さん」

「お・母・様・ねっ」

「慣れーん」

「慣れんと苦労すっとは、あんたたい。学校は貴族の令息令嬢も多かけん。人は他人のボロが好物なんだし、マナー守っといて損はなかよ」

「はーい」


 自己紹介をしよう。

 私は、ジオルド。15歳女です。

 カナリー子爵領の第一子で長女。父と母がいて2つ下に弟がいる。

 父はこのカナリー子爵家の長男として生まれて育ち、3年前に爵位を引き継いだ。

 母は元平民で農家の娘。通常はこてこての方言だが、貴族言葉も使い分けれるバイリンガルだ。

 父との出会いは、長くなりそうだからカット。

 そんな母に貴族教育を施した祖母は(今は)王都住まいの53歳。田舎から出たことがない私なんかよりよほど弾けた若さを持つ元伯爵令嬢。マナー教師として評判が良いらしく、あっちこっちと引っ張りだこ。とにかくよく移動している。

 そんな祖母と領地と王都のタウンハウスを取り持つ祖父は我が家の社交役の55歳。幅広い人脈と一度見た顔を忘れないという特技で、犯人逮捕に協力要請が来ることもある。そして、祖母以上に移動が多い。


 私も、父の爵位引き継ぎまでは、一緒に住んでいたおばあ様に教育を受けたので、それなりに繕うことは出来る、が。


「貴族訛り、なれーん。」

 行く先不安だ。



 明日から私は王都の横にある学園都市に向かう。

 此処からゆっくり旅で1ヶ月ほど掛けて行く予定をしている。

 ここ、わが領はこの巨大な王国の端っこにある森が主な土地。

 森はこの国の西端の境。大きな森林地帯が長く南北に広がり南は海まで達する。この森林が国境になっている。

 境を争う気も起きない程の深い森の向こう側は別の国だが、こちらと同じ穏やかな性質のようで、ここ数十年は争いもない。


 うちの領地は大半は森。川が何本も走り、池や小さな湖と言って良いサイズのものがいくつも点在する。小さくはない領地だが、人がすむ土地は2割以下。

 平地は農地を広げるが、牛馬の生殖が盛んな所。


 地方の村や町を管理するために中央から派遣されたお役人が、うちのご先祖様。今の王国より前からこの地に住み、代々の王家にこの地を任せられてきた。なので、それなりに古い家柄で領民からの信頼関係もそれなりにある。過も不足も有る。が、それほど大きな問題はない、良くある中堅貴族だ。

 北隣の辺境伯領とは、何度か婚籍を結んできた遠い遠い親戚で、向こうは武をもって盾なる人を育て、うちは物資や生産技術でその力を支える、という間柄で代々良好な関係に至る。

 持ちつ持たれつの関係。そして王国はその関係に守られてもいる。

 人は少ないが、それなりに大きいわが領地。物理的に管理の目が届かない所が出やすいので、そこは拠点に人を置くことで対応した我が先祖様。つまり我が親族はこの領地に見合うかのように人が多い。大々々々家族だ。

 本家となるうちは姉弟の2人だけだが、いとこは父方だけで14人いる(増える予定もある)。

 全員ではないが子供らは長じて、領地管理の事務方になっていく。領地の隅々に目を配れるよう幼い頃から馬に馴れさせられ、数を歌や遊びで覚えさせられる。

 そんな我が家の子守唄は赤ちゃんを眠らせるには効果的だが全然可愛くない。普通に15歳の今聞いても眠くなる類いの難解さだ。

 なのにやっぱり私にも受け継がれているのは、本当に良く子供が寝てくれるからだろう。

 完全に外から嫁いできた母さんも、嬉々として元気な子供達に歌ってやるのだ。

 そうして我ら一族の理想の姿である「動ける文系」に成長していく。


 とまあ、貴族令嬢たるもの、わが領地と一族の事としてそう教わったけど、そう、結局は辺鄙な土地の田舎者である。

 そして田舎の若者の例に漏れず、私は約2ヶ月後からの都会の学校生活に期待で胸が張り裂けんばかりなのだ。


「そろそろみんな来る頃よ~」

 と母さんが言う。

「え、まだ朝たい。早すぎじゃない?」

「そうけど、今年は本家(うち)からジオも行くし、親族の人達が大体の人がくるやろ?あん人達は早かけんね」

「ああ、そっか」


 うちの領から都会の学校に行く子は0~5人程度。1年のこの時期に領都と言えるこの街から商隊に同行させてもらいながら出発する。

 その出発前に送る会という祭じみた食事会をする。入学者の家族や友達を呼び、お別れ会を領主家(我が家)ですると言うのが始まりだが、友達ってどこからどこまで?とか、あの近所のガキんちょが立派んなって(泣)一言だけでも何か言ってあげたい。と言う町の人も増え、近年祭みたいになってきた。

 というか


「それでも早すぎるやろ。今から朝食って時間たいね。流石にこの時間はないやろ~」

 そう言って下の食堂ホールにおりて、誰にでもなく声をかけながら扉を押した。

「おはよー」


「あ、おはよう」

「おー・・・ふぁ~よぉ」

「おはよう」

「んーはよー」

「おはようー」

「あ、おはようー」

「お早うございます」

「お。よう!」

「こらっ『おはよう』でしょ!もう!おはようジオ、姉さん」

「お。おはようジオルド」

「お早うございますお嬢さん」


 いつもの倍の挨拶返しがあって、思わずまばたきが多くなる。

 叔父達とその嫁の叔母さん達と眠そうないとこ達とうちで働いてくれているメイドさんたちである。


「お、おぉお?皆?早いねぇ」

「ほらね。甘かねぇ~ジオは。うちら田舎もんの中でもカナリー家は早起きの筆頭たいね。行動の早かもんね~」


 そう私の後ろで呟いて、『皆さんお早うございます、朝御飯は食べていらしたんですか?用意させましょうか?』などと女主人の顔で追い越していった。


 この後、私の弟が起きてきた時も私と同じ反応をしていた。その時には父方の兄弟家族は揃い終わっていて、今度はいとこ家族が揃いつつあったので、私よりも圧巻の朝の挨拶を返された弟の心情はいかばかりか。

 …なんて、自分も「おはよう」に参戦しつつ思ったのだった。



 ・

 ・

 ・

 ・


 正午がほどほどに過ぎた頃、送る会の準備をのんびり手伝っていた親族達が、給仕たちに後を任せて自分達の仕上げにはいる。

 女性陣はエプロンを外して化粧を直し、男性陣は腕捲りした袖を降ろして上着を着直し乱れた髪に櫛を整えた。そうして私達は領主一族として恥ずかしくないパリッとした空気を纏った。

 ・・・会の開始1時間前の事である。何でも気の早い家である。


従兄弟視点


いなか道でよく跳ねる馬車の揺れさえ眠気に変わる。眠すぎて目のあかん。

今日は従姉妹のジオが学園都市のサカキハラに入学するけん、お別れ会に参加するために領都に向かいよる。


一番上のにーちゃんと下の妹は久し振りの領都に興奮してて眠く無かごたっけど、…まだ朝鳴鳥も起きとらん時間だし、幌の外も暗か。

おいがおかしかとかなあ。

早く寝るごとすっかな…ふあぁ~


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