帰省? 旅立ち?
「やっと見つけた、これじゃすぐに見つかるわけないわよね。」
ビルの屋上から男の子をみつめる1人の女性。
黒地の布に桜の様な花が描かれている膝上までの丈の和服。
街中を歩いていたら目を奪われる整った西洋風な顔立ちに、
背中まで伸びている銀髪を夜風になびかせ
20代前半の見た目にはそぐわない妖艶な雰囲気を醸し出してる。
「ふふふ、久しぶりね、また後で会いに行くわ。」
――
学校のチャイムが鳴り響く、今日の最後の授業終了の合図だ。
「水輝くん、もう授業おわってますよ〜!いつまで寝てるんですか〜?」
気持ちよ〜く寝ていた俺を起こしたのは幼馴染のクラスメイトでもある美優だ。
誰にでも優しく、成績優秀、先生方の評価もよろしい。茶髪のショートヘアも似合っている。
背丈は俺の目線にちょうど頭のてっぺんが来る。
ただ一つ残念なことは、小学生の時から胸元があまり成長していないということ。
「ん〜…もう終わった?じゃあ、帰ろうか」
机に突っ伏したままで凝り固まった身体を伸ばし、帰り支度をする。
「学校に何しにきてるんだか、次のテストもやばいでしょ〜?帰ったら復習しないと」
嫌な単語が聞こえたがそこはスルーだ!そんな事よりやらなきゃいけない事が、
今ハマっているゲームが好きなアニメとコラボ中なのだ!期間限定のキャラをなんとしてでもゲットしなければ!
「よし、早く帰ろう ほら置いてくよ」
必要最低限の物しか入っていない鞄を掴み美優を急かす
「はぁ…帰るときだけは早いんだから」
学校を出ていつもの帰り道、人通りが少ない細い路地にさしかかった時、女性が向こう側から歩いてくる。
ただその女性は黒い着物の様な格好をしている。
何処かで見たような気が…
「綺麗な人だね〜、水輝くんはあんな感じの人か好みなの?そんなにガン見しちゃってさ…やっぱ男の子って胸が大きい人がいいんだねー」
別にそこだけを見ていたわけじゃないのだが、
美優は気にしてるのだろうけど大きければ良いってもんじゃないよね。
でも言われて見みると確かに美人だ。長い銀髪も似合っている。ふと横を見ると美優は少し拗ねた顔をしている。
「こんにちは、水輝」
急に呼ばれてそちらを向く、誰だこの人 なんで俺の名前知ってるんだ?
気づけば目の前まで銀髪の女性は来ていた。
「すごく纏を隠すのが上手ね、見つけるのに苦労したわ。さ、早く帰りましょう。」
……なんて?
「え⁉︎水輝くん知り合いなの?」
「いやいや全然知らないよ。てか、言ってる事が全く理解できないし、どちら様ですか?」
「……私はあなたのお姉さんのレイラよ、弟に自己紹介なんて変な感じね」
「えぇー⁉︎お姉さんがいたの⁉︎教えてくれても良かったのに〜」
美優が声を荒げて騒いでいる。
いやいや、そんな筈はない。姉がいたなんて話は親からも聞いたこともないし、第一に今初めて出会った人だ。…多分
「俺に姉はいませんし。迎えにきたって言われても あまり変なこと言うと警察呼びますよ?」
新手の勧誘か?誘拐か?めんどくさいの嫌いなんだよなぁ…
「単刀直入に言っちゃうと、水輝、あなたこの世界の人間じゃ無いのよ。話すと長〜くなっちゃうんだけど、私たちの世界から魂だけをこっちに移したの。やっぱり記憶は無くしてしまった様だけど」
「えぇー⁉︎水輝君 宇宙人だったの⁉︎」
「美優、うるさいぞ。そんなわけないだろ。」
美優は昔からなんでもすぐ信じちゃうからなぁ。
「これを見たら思い出せるわ」
そういうと袖下から野球ボール程の水晶玉を出してきた。
その玉が光を放ち視界を奪れると同時に、爆発音、人々の悲鳴
燃え盛る家、男の人の怒号、悲しそうにこちらを見つめる女性、
その他色々な情報が脳内に流れてくる。
「少し手荒なやり方だったけどこうしないと信じてくれないものね、今見たのは水輝、あなたが私達の世界で最後に見た映像よ」
言ってることがいまいち分からない、その前に頭が割れそうだ、
息も荒くなってる。苦しい……
「え?ちょ、ちょっと‼︎水輝くん!どうしたの‼︎しっかりして!
水輝くん⁈」
地面に膝をついて肩で息をしてる俺を気にかけて
美優が俺に何かさけんでる。
そこで完全に意識を失った。