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8 、ストーカーじゃねえか


ピンポーンという玄関ベルの音で火曜日は始まった。時間は朝の5時だ。


「誰?こんな早朝に。」


後ろからモゾモゾと敦も起きてきた。


「んーだぁれぇ?やっぱり彼氏?」


「だから居ないんだってば!何度言わせるの。それにこんな時間にくる彼氏ってどうなの?」


と意味の分からない問いかけをする位には寝惚けていた。


「ふーん。」


敦も眠いのか適当に返事をした。


「はーい出まーす。」


声をかけて玄関を開けるとそこに居たのは目を真っ赤に腫らしたいつものラフな格好のもやしだった。


「美桜さん!誰なんですか!その男は!」


「えっ?」


「その後ろの…うわぁどうしてそいつ下着姿なんですか!浮気ですか!」


「へ?」


「美桜さんは僕の婚約者ですよ!」


と私越しに後ろの敦に言う。というか昨日来たばかりの敦の事を既に知っているなんて…。


「やっぱりストーカーじゃねえか!」


「ストーカーじゃないもん!ちゃんと本当のストーカーは捕まえたし!」


「ええー困ってるの?ストーカーなら撃退してやろうか?」


いつにも増して低い声で敦が私の前に立ち塞がった。こいつはストーカーはストーカーでも良いストーカーだぞ。お前らが金出せっていうのを全部…。そうだいい事思いついた。


「ねえ篤輝さんホテルの部屋借りられます?」


ぱあっと花が咲いたような笑顔で答える。


「ええ!あなたの為なら建物ごと全て。」


「ここから近いホテル1室借りてくださいますか?」


「ええ!執事!」


「はい坊ちゃん手配しました。」


「じゃあこの男を来週の月曜日まで泊めてあげてください。」


「あ?」


敦はとても怖い顔で私を睨む。絶対にあっくんは私をこんな風に見ないもん。


「えっ美桜さん僕と泊まってくれるんじゃなかったんですか?」


悲しそうなもやしの手を両手で握り上目遣いで言う。


「この人借金取りで…無理やり入ってきて怪我したから世話してくれって…。私…怖くて。」


と嘘泣きをしてもやしに抱きついた。


「なんですって。美桜さんをそんな目に。」


もやしがとても怖い声で言う。顔は抱きついているから見えないが…なんというかビリビリする位怖い声だ。敦より怖い。


「なっ美桜ちゃん話が違うじゃん。ちゃんと俺を世話してよ!」


えっそこ?こいつ変わってるな本当。


「美桜さん僕が守りますよ。お前はホテルに行けよ。」


もやしが低くドスの効いた声で言う。元々少しかすれた声なので余計に怖い。


「はっどの口が言うんだか…。分かりました行きますよぉ。じゃあねぇ美桜ちゃん。次会う時覚えとけよ。」


敦が通り過ぎながら私に言う。怖い。震えてしまっているのかもやしがぎゅっと抱きしめてくれる。


「大丈夫美桜さんもう行きましたよ。よしよし怖かったね。」


「怖かったですぅ。」


最大級のぶりっ子で言う。何となくもやしにはわがままを言いやすい。


「よしよし。ねえ美桜さん僕心配なんです。あなたが以前言ってくれた借金取りの話やストーカーからの手紙の話をふまえてもあなたがここに住み続けるのは絶対に危険です!」


「と言われても…私好きなんですこのアパート…。」


「何かあってからじゃ遅いんですよ!だから買いました美桜さんの部屋を。」


「は?」


買った?部屋を?


「ええ買いました。ロフト付き2LDKの新築1年で僕のマンションから徒歩30秒です。」


「へ?あなたのお部屋駅から5分ですよね。」


「ええとても便利ですよ。だから引っ越してください。もう準備もしてあります。家具や家電は全て揃えてあります。携帯電話もこちらで用意しました。」


と新機種だとcmで見た携帯電話を渡される。いやいや何が起こってるの?いや待てよもしかしてとてもいい話なのでは?とりあえず働く場所が決まるまで家賃の心配をしなくて済むし、いやでも人としてそれはどうなのだろうか?


「美桜さん悩む必要はありません。マンションの名義はあなたの名前にしてあります。心置き無く住んでください。」


そういう問題ではないが…。


「えっと。どうしてそこまで?」


「そんなの決まってるじゃないですか!美桜さんの全てを把握したいからです!」


もやしが言い切った。やっぱりストーカーじゃねえか。


「お断りします。」


「あっうそうそ!違います!心配だからです!」


「本当に?」


「本当です!」


「盗聴器とかはない?」


「それはないです。」


真顔で言うので本当に無さそうだ。


「じゃあ住んでみようかな。」


「ええ!じゃあ荷物を運び出しますね!」


ともやしの一声で人が現れてあっという間に全てトラックに積み込まれた。断捨離好きが功を奏してすぐに終わったようで執事さんが思ったより早く終わりました意外と優秀ですねと言いにきた。


「さあじゃあ行きましょう!」


といつもの黒塗り外車に乗せられた。




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