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7、面影


「はいこれとりあえず借用書ね。」


笑顔で私に書類を握らせる。とにかく父さんの借金は返した。後は一週間、今日は月曜日なのでその男性は来週の月曜日の朝に捕まる予定らしいのでみっちりこいつの世話をしなければいけない100万渡されたし。


「はぁ…で服とかはどうするの?」


「うーん彼氏が置いていった服とかないの?」


「ある訳ないでしょ。あるなら最初から出してるわよ。」


「だよねぇ。じゃあ少し先に服屋さんあるでしょ。行こうよ。勿論俺が払うから。」


「分かったわ。あそこなら下着から何から全部揃うんじゃない。タオルとかは新しいのを卸すわ。」


「ありがとうねぇ。美桜ちゃん。俺の事は敦でいいよ。同い年だしね。」


「敦ね。とりあえずお昼食べる?」


「うんありがとう。」


お昼は軽く温かい素麺にした。なにも入っていないお出汁と素麺だけ。


「温かい、美味しいね。」


「あんた寒がってたから。」


「ふふふありがとう。美桜ちゃん優しいねぇ。こんな男に優しくするなんて。」


「私は皆に優しいの。」


「ふーん。」




「俺、寝る時はシャツとトランクスだけなんだけどそれでいい?」


「下着で彷徨いたら殺すから。」


「えぇ俺眠れないじゃん!お願い。」


「ていうか布団一組しかないからあんた床で寝てね。毛布は2枚貸してあげるから。」


「えぇ!ひどぉい!絶対にトランクスで寝るから。」


こいつの声が大きく周りの人にクスクスと笑われている事に気が付いて慌てて言う。


「分かった。もう好きにして!」


「いえーい!じゃあシャツは長袖と半袖を3枚ずつ買って、パーカーを1枚にズボンは下着もいるし…。」


ここは店舗型の服屋さんで売り場も広くレディース、メンズ、キッズの下着からズボンやアウターまで何でも揃っているし安価で私もいつもお世話になっている。


「ねぇ美桜ちゃん俺は終わったよ。美桜ちゃんは何か買う?」


「いいえ私は大丈夫。ありがとう。」


「ううんじゃあ支払い手伝って。」


「ええ。」


そういえば元気だから忘れていたがどこかの骨が折れてるんだっけ。仕方なく荷物を持ち財布を渡したりする。


「美桜ちゃんありがとう。ちょっと痛くなってきたから肩貸してもらえる?」


「分かった。」


店舗から出るともう17時を過ぎていた。服を一通り揃えたら割と時間がかかるな。


「美桜ちゃんありがとう。ちょっとさすがに休むね。」


敦はさっきと同じ場所に寝転び少し眠り始めた。


「ええ。」


私は買ってきた服のタグを全て取っていつも通り……しまったまずいぞ。父さんの性格なのか買ってきた服はいつも洗濯してから着ていたせいで私も新しい服は全て洗濯するので本当に無意識に勝手に服を洗濯してしまった。


「ねえねえちょっと。敦。」


「んんなぁに?」


少し眠そうにこちらを見た。


「ごめんなさい。」


「急にどうしたの?」


「あなたの服全部洗濯してしまったの。ごめんなさい。いつも父さんがそうするから…癖で…勝手なことをしてごめんなさい。」


敦は柔らかく微笑み、


「なぁんだそんな事かぁ大丈夫だよぉ。」


「ごめんなさい。下着とかは今ドライヤーで乾かしたから。シャツも2枚だけは乾かしたの。」


「充分だよありがとう。」


「優しいのね。そんな見た目なのに。」


口を出た後にハッとして後悔した。こんな言い方幾ら何でも失礼だ。


「重ね重ねごめんなさい!」


「ふふふ美桜ちゃん大丈夫、大丈夫だよ気にしないで。」


敦のその微笑みに何故かあっくんと重なった。ありえない、絶対にありえないんだから。


「美桜ちゃん1週間は短いようで長いよ。ゆっくりやっていこうよだからそんなに緊張しないで。大丈夫美桜ちゃんの嫌がるような事は絶対にしないし、いやらしい目で見たりもしないから。友達みたいに過ごそ?ねっ?」


この敦という男はあんな職業の割に普段はとても穏やかで優しい男のようだ。


結局こいつは本当にトランクスとシャツという姿で眠りについた。毛布やタオルケットはたくさんあるので床の上に分厚いヨガマットを敷きその上に座布団を置いてその上にタオルケットを2枚重ねて敷布団のようなものを作ってやり薄手の毛布を掛け布団として渡すと満足そうに眠りについた。


「ふぁ眠いけどもう少し本を読もうかな。」


独り言だったのに眠ったと思っていた敦がこちらを向いて、


「美桜ちゃん駄目だよ。今日は俺の世話で大変だったでしょ?もう眠って。」


と真面目な顔で言うので、


「分かったおやすみなさい。」


と背を向けて眠りについた。




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