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目を開けるとそこは、プールサイドでも保健室でもなく、薄暗いところで、やっぱり、前にはチチさんがいて、ニコニコしている。
こいつらとは腐れ縁かと深く諦め混じりのため息を吐く。
ウラギールのことを尋ねると、今、稽古中とのこと。意外にも真面目に取り組んでくれているようだ。そこで稽古場へ行ってみる。
ウラギールは高みの見物で、みんなを見ている。僕が近ずくと、振り向き軽く会釈する。
「さまになっているじゃないか」
お世辞抜きで褒めると、まだまだですと不満を漏らす。それならなんで前々からやらなかったのだと、追求したかったけど、そのことはやめといて、こちらの考えを話した。
「オークたちは防御が苦手なようで、何か工夫したいのだが、良い案がないだろうか」
ウラギールは口に手を当てて考え、
「防具とか色々考えて見ましょう。高級なものは用意できないが、みんなが装備できる分は用意してみましょう」
「そうだな、全員装備できるものでいいと思う。お願いする」
「御意」
僕はウラギールと別れ、オークの方へ行く。
オークたちは3列になって走っていた。
僕が整列と叫ぶと、こちらに飛んで来て、3列に並ぶ。そのあとは武器を持っての攻撃の練習をさせ、僕は立ち去った。
それから3日たって、勇者3人パーティーが城を攻めて来た。
迎え撃つのはオークで、みな鎧、盾、を持っていた。
3人に向かってオークが3列で先制攻撃する。魔法使いが、ファイヤーボールを放つも、盾で受ける。慌てて次を放とうにも、すでにオークは目の前にいて、武器で攻撃する。僧侶風の人は攻撃が不得手なのか、オークが近ずく前に逃げて行った。真ん中の剣士は、剣で攻撃するも盾で防がれ、武器で攻撃される。僧侶がいなくなったので、そっちからも加勢が来て防戦一方だ。
ものの数分で形勢が圧倒的な展開になり、勇者パーティーは逃げの一手になってしまった。
それを魔王城の屋上で見てオークたちの成長ぶりに微笑んだ。
それから3日たってからのことである。
伝説の勇者5人がこの城に向かっているとの情報に、魔王城内はパニック状態になっていた。
「伝説の勇者とはそんなに凄いのか」
魔王城内の状態から想像すると相当強そうだが、僕はどれくらい凄いのかウラギールに聞いてみた。
「先代の魔王様。つまりチチ様の父上は立派な魔王様で、魔王城もここではなく大陸の中央、つまり現国王の城のところにありました。そこでこの大陸の全土を支配していたのです。
魔王様は好戦的な人ではなく、人とも友好的な関係を築く人でした。そんな魔王様のとこへ、北の方から時々刺客が送られてくることがありましたが、飛んでくる火の粉は払いますが、こちらからは追撃するような人ではありません。その後、何度目かの刺客で、こちらの戦力を図っていたのでしょう。満を持してやって来たのが、今は伝説に謳われている勇者たちです。
彼はら本当に強かった。当時の四天王と言われた強者を屠り、魔王様と対峙し、そして、魔王様は善戦しましたが、敗れ去ったのです。今から60数年前のことで」
(そのことがトラウマになっているのだろうか。城内が異常なくらいパニクっているような気がする)僕は、少し考えて、
「ウラギール。お前はその勇者たちと戦ったことあるのか」
「いいえ、私は、チチ様の付き添いでしたから」
「そうか……。では戦っていたら勝てたか」
「どうでしょうか」
(否定はしなかった。ということは勝算もありということか)
「勇者が来たら教えてくれないか。僕が相手しよう。良いな」
「御意」