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目を開けると薄暗く、想像通りの展開で、目の前にはタワワニ・ミノル・チチが立っていた。
「魔人様。また、召喚に応えていただきありがとうございます」
「また、お前らかい」
僕は魔人じゃなく勇者として召喚されたいのだ。
「あのなあ、魔人召喚って指定できるのか」
チチさんに尋ねると、
「いいえ、ランダムです」
どんな確率だよ。二回連続で召喚されるなんて……。
あれからのことを聞いてみると、勇者一行は裸で逃げ帰ったようだ。それからは、まだ、勇者は来てないが、いずれまた来るだろうとのこと。それなら、あいつら鍛えるか。僕がチチに頼んで魔王城の前の広場にあのオークを集めてもらった。
皆同じ顔で判別できないので、ゼッケンを付けてもらい、準備できたところで、「整列!」と、叫ぶ。
僕の前に全員並ぶ。
何故か縦一列に並んでいる。さすがに頭にきた僕は、3列に並べと叫んだ。
1、7、13が先頭でその後ろにみんな並ぶ。
「よし、いいか。1番、7番、13番が常に先頭で、その後ろに順番に並ぶこと。いいな」
「いえっさ」
「ようし、今日はこのままランニングで終了。いけ」
「いえっさ」
あいつらはこれぐらいで。他の上位の魔族はどうだろう。僕はウラギールに頼み集めてもらう。
集まってもらうと威圧感ある。とにかくデカイ。僕は身長高い方じゃないので、これだとやりにくい。
「みんな、人間の姿に変身しろ」
何かブツブツ言っている奴がいたから、
「早くしろ。勇者の前に、お前ら全員殺そうか」
怒りを出すと、みんなが慌てて人の姿に変身した。
やれば出来るじゃないか、と見ると、何故かハンサムな奴ばかりだ。身長は高いし、ほっそりした体形。おまけに顔は芸能人級。ちょっと釈然としないが、ここは我慢することにした。
それじゃ、模擬戦始めよう。
「ほう、へえ、はあ、だあ、どわ、だは……」ため息が出る。何、こいつら、チャンバラごっこか。あまりの酷さに、ウラギールに、
「なあ、ウラギール。こいつらこんなもんか?」
「こんなもんですよ」
(こいつ何考えているんだ。みんなの力量知っているような言い方だ。それなのに……。本当に名前通り怪しい奴だ)
「ウラギール、あいつら鍛えてくれないか」
「私がですが」
不思議そうにこちらを見るから、念を押した。
「そうだ。10日後確認する。良いな」
「御意」
10日後が楽しみだな。はたしてどう出るかな。それで、ウラギールの素性もわかるかもしれないな。
「さて、僕はちょっと失礼するよ」
あれ、何でだ。ふと、思ってしまった。僕はどうして魔族たちのこと考えているのだろうと。僕は勇者になりたいのだ。魔族なんかほっとけばいいのに。何故だろう。つい手を出してしまう。くそ、なんかムシャクシャする。イライラしてきた。気分転換に、水浴びできないか、近くにいた魔族に聞いてみた。
6階に風呂があると言ってたけど……、ここか?。服を脱ぎ浴室へ入ろうとすると、素っ裸のチチさんと出会ってしまった。もろに見てしまった僕は、鼻血が……。それを見て慌ててチチさんが、僕の方へ無防備な姿で近ずいて来る。それ以上は近づくなと拒否した時にはすでに遅く、僕の背中に心地よい感触が……。俺の意識が遠のいていった。