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ハルタカさんにコックピットへ案内され、スクリーンに映る景色を見ると、僕たちは高速で移動中のようだ。
行先もすでに知っているようでオーストラリアの方向へ飛んでいる。
ザネインは未知のテクノロジーに興奮して、ハルタカさんにこれはどんな魔法ですかとか色々尋ねている。
ハルタカさんもまんざらでもないようで、
「これはな、科学といって、魔導の深淵を覗いた者しか分からないものなのだ」
僕は聞いていてコケそうになったが、ザネインは目をキラキラさせ凄い凄いと絶賛しているので、水を差すのはよすことにした。それよりハルタカさんって大丈夫か?、思考がなんだか僕と似ているような気も……、いやいやそれはないな。僕の場合は足が沈む前に逆足を出せば水の上を移動出来るとか、ものすごい勢いで大気を蹴ればどんどん上空へ飛んでいけるとか、理にかなった思考だ。うん、ハルタカさんみたいなでたらめとは違うな。
あっという間にオーストラリアに着いてしまった。どこに着陸しようか考えていたが、魔王城の裏側が平坦で広かったような気がするので、そこにしたらどうかとハルタカさんにいってみた。
ハルタカさんも納得したようで、とりあえす自分たちの家を魔王城の屋上に据え、飛行船は魔王城の裏に着地させた。
屋上に据えた家にチチさんとウラギールを呼び、僕の両親を紹介した。その二人とザネインは見たことのない建物と家具類や電化製品に興味津々で、ハルタカさんを呼んでは色々聞いている。特にトイレは興味津々で熱心に聞いていた。僕もこの家は気に入ったので、ヒトリと引越しをする事にした。
イツキさんは僕がヒトリを妻ですと紹介すると、ちょっと驚いたあと、嬉しそうにハグして、早くも姑モード突入で色々教えている。特の今夜はパーティーするから極小家の味付けの特訓よと張り切っている。
そんなこんなでみんな楽しそうなのだが、僕はふと沈んだ気分になる。それを見透かされたようで、ハルタカさんが尋ねてきた。
「茜さんのこと気に病んでいるのか」
僕が正直に最近よく見る夢のことを打ち明けると、ハルタカさんは少し考えて、ポケットから金色のリングを取り出し、僕に渡した。映画のロード・オブ・・・に出てくるような指輪で、これはなんですか、と尋ねると、
「この指輪は冬眠カプセルと同調しているのだ。だからこの指輪をどうにかして茜さんに渡したまえ、ひょっとしたらカプセルで寝ているかも知れないぞ」
ハルタカさんは何が嬉しいのか僕の肩をポンポン叩く。
「まてよ、お父さん、おかしくないか」
「え、今なんて言った」
つい興奮して口を滑らしてしまった。
「ハルタカさん。あのですね」
「いえいえ、そうじゃないだろう。今、おと……とか言ったろう」
「そんなことどうでもいいだろう」
「よくない。よくないぞ。さあ、もう一度言いたまえ」
あまりしつこいので諦めて、
「お父さん、質問があるのだが」
恥ずかしくて顔が熱くなる。
「うんうん。いい響きだ。もう一回言ってくれ」
これではらちがあかないので、半ギレ状態で、
「後からいくらでも言ってあげるから、今は僕の疑問に答えてよ」
それで疑問に思ったことを口にした。
「カプセルってあの船の中にあるんだよな」
「そうだけど」
「それじゃ、今開けたらどうだ」
「バカだなぁ。今開けたらいないに決まっているだろう。指輪ここにあるんだから」
「え、それじゃ指輪渡したって意味無いのでは?」
「そんなことはないさ。よく聞きなさい。いいか、その指輪はカプセルと同調しているのだ。もし茜さんがその指輪をしたとしよう。すると、同調が始まり、時が来れば瞬間移動でカプセルの中に入る事になるんだ。分かったかね」
全然わからない。僕が???状態でいると、
「つまりだな、今はいないがその指輪を渡したとしよう。するとカプセルの中は、茜さんがいるかも知れないし、いないかも知れない、そんな状態になるのだ。簡単に言うとシュレディンガーの猫状態というわけだ」
さっぱりわからないが、僕のできることは何もない。それで駄目元で信用する事にした。
夕食のパーティーは最高だった。みんな楽しく、たらふく食って大満足。料理はお母さん(イツキ)とヒトリで作ったそうで、二人ともうまくやっていけそうだ。
お母さんが食後にと女性陣にソフトクリームを出したが、これも大好評で、チスイちゃんは特にニコニコでご満悦だ。
食後はみんなでコーヒーを飲みながら談笑して、夜が更けると、おひらきにして就寝した。もちろん僕は手に指輪を持って眠った。




