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僕は最近同じ夢を見る。夢の内容は決まって僕が寝ている横で、茜が学校のこととか勉強のこととか話している夢だが、最後に決まって真剣な表情で何かを言っているのだ。それが何時も聞き取れなくて分からない。そのことがどうしても気になるのだ。
そんな事があって、一度元の世界に帰りたいと思うようになったのだが、自分があちらでの最後の記憶が車にはねられている記憶だ。ひょっとしたら僕は死んでいるかもしれない。それだと帰れるのだろうか疑問だ。あちらに帰ったら幽霊だってこともあるかも。それだと今度はこちらに帰れないってことになるかもしれない。そんなことを考えると、あちらに行くが怖いし、不安になる。だが気になる。茜は何を僕に言いたいのだろう。気になってしょうがない……。
そうだ、一度、今の日本へ行ってみようか。ひょっとしたら何か感じるものがあるかもしれない。ダメ元でいいから行ってみよう。
で、ザネインに一緒に行かないかと誘ったら即OKしてくれた。ザネインも魔導の聖地である日本には一度行きたいと思っていたし、うまくいけば誰も見たことのない魔導書を発見する事だってあるかもしれない。それで行くことになった。
今、日本の上空を北上しているのだが、僕のいた時代の近代的な建築物の影も形もない。どれだけの歳月が経てばこうなるのだろう。それでもフレール王国のような建物や、江戸時代のような建物が所々あるので、人が生活していること事がわかる。
確かこの辺が東京だろうか、上空から見る地形で判断して、そこの建物が集中しているところに下り、少し歩いて見る。
時々見る通行人は、日本人の顔で、日本にきた気はするのだが、道路は土や砂利の道路で、僕がいた時代とは真逆の世界になっている。
一変している周りを見ながら歩いていると、前方に一際目立つ建物があったので、中に入って見ることにした。
中はテーブル席がいくつかあって、2組や3人組のパーティーだろう人たちが座っていた。その中を、奥にあるカウンターを目指し歩いていると、何故か皆こちらに視線を向けてきた。はじめはよそ者だから見ているだけだと思っていたのだが、奥に行っても視線は纏わり付いたままだった。
僕たちがカウンターに近づくと、そこにいた黒髪でショートカットの美しいお姉さんが、先に挨拶をしてきた。こちらも挨拶を返し、正直にここへきたのは初めてだと言うと、女性は奥のドアを開け、マスターを呼んでいた。
マスターと呼ばれた人は、かなりの高齢のようで、小柄で頭に髪がなく、その分、長いあご髭を蓄えていた。
「私はここの冒険者ギルドのマスターで、シイナ・マルイです」そう言って、僕をジロジロ上から下まで見る。
こちらも名前を教え挨拶すると、シイナさんは長い髭を右手でなでなでしながら、
「カズキと言ったかな、その服はどこで入手したのかな」と、ジロジロガン見する。僕の今日の服装はこちらへきた時の学生服で、それを見ていたようだ。僕は正直に、
「これは僕が通っていた学校の制服です」
「なんと。あなたは中二病様になる修行をしているのですか」
シイナさんは驚きの目を向け、学生服を更に鋭い視線で見る。
「確かに、この服は今の時代には無い特殊な技法で作られたものじゃな。あなたが中二病様になる修行をしていると言うのもあながち嘘では無いようだ」
シイナさんは何度か頷き、また髭を撫でた。




