第6章 茜の決意と僕の両親それとシュレディンガーの猫?
第6章 茜の決意と僕の両親それとシュレディンガーの猫?
「ねえ見て、素敵でしょ」
茜はくるりと一回転してアピールした。
「お兄ちゃん。私、明日から高校生だよ」
茜は今にも溢れそうになる涙を右手で拭き、あれからずっと眠ったままの兄に話しかけた。
救急車で運ばれ検査を受けた時は、事故の割に脳や臓器にダメージがなく、数カ所の軽い骨折と一部に軽い内出血があるだけだと知らされ、茜は駆けつけた両親に抱きついて嬉し涙を流したのだが……。
あれからひと月経っても目覚めない兄に、茜は悲しみの涙を流す日が続いた。
主治医によれば、脳に損傷がなく、目覚めないのがむしろ不思議で、自ら目覚めるのを拒んでいるかのようだと首を傾げた。
こういった症状の場合、患者さんに話しかけるのが良いと聞いた茜は、一年生から続けていた陸上部を辞め、授業が終わると毎日病院に通っては兄に話しかけていた。
今日の出来事や勉強のこと他愛の無い話などを。時には、話しても帰ってこない返事に涙することもあったが、グッとこらえ辛抱強く話し続けた。
そして兄が目覚めた時、茜は日に日に高まる兄へに気持ちを、素直に言おうと決めていた。
子供の頃、茜はよく男の子にいじめられていた。それは可愛かった茜に注目されたいという男の子の意思表示であったが、幼い茜には恐怖でしかなかった。それを見つけると、いつもお兄ちゃんが飛んできて、相手が大きかろうが、大勢だろうが、僕の妹をいじめるなと言って飛びかかっていった。
「どうだ茜。やっつけたぞ」
兄は顔を土で汚し、鼻血を流しながらも、明らかにボコボコにされ負けているのに、どうだとばかりにニコニコ笑顔で言った。そんな兄が大好きだった。子供心に、ずうっと一緒にいたいそう思うようになった。
そんな儚い子供心が、年を重ねるにつれ、無理なことだとわかったのだが、居間のテーブルに置いてあった一通の手紙で一変した。それはアメリカからの手紙で、茜は興味本意に中を見た。
手紙は日本語で書かれたもので、一月お兄ちゃんを、父親がお願いするといった内容の手紙だった。
これを読んだ私は、私とお兄ちゃんが血が繋がっていないことを知り、驚き以上に嬉しさが込み上がってきて、お兄ちゃんをひとりの異性として見るようになった。それから何度か自分の気持ちを伝えようとしたのだが、お兄ちゃんの目は何時も私を妹として見ていて、それで言い出す勇気が萎えるのであった。それで、いつかは自分の気持ちを伝えようと思っているが、今はお兄ちゃんの妹でいいと思うことにした。あの事件が起きるまでは……。
中学3年になった茜は、医学の道へ行くことを決心した。そして、このまま目覚めないようなら、自分で治療して、目覚めた時、自分の気持ちを素直に打ち明けようと心に誓うのであった。




