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「番組の途中ですが、緊急特番に変わります。どうかチャンネルをそのままでお待ちください」
男がテーブルから立ち去ると、変わって、ナナカマドさんとイルミさんがそこに立った。
ナナカマドさんが一礼して、
「私は、ナナカマド・ミナール・フォークロバーです。横にいるのは私の姪、イルミ・ミナール・フォークロバーです」
イルミさんは軽く会釈をして控えた。
「今、巷で世間を騒がしているのは、私ではありません。真っ赤な偽物です。私は3日前の深夜に、何者かに襲われ、うさ耳を奪われた挙句、地下室に幽閉されていたのです。それを、イルミ王女に助けられ、今こうして皆様の前にいます。犯人は私の兄であるシロツメ・ミナール・フォークロバーを殺害し、血族である王族たちを粛清しました。そして、自分が王になろうとしています。その人の名はドグマ・ジル・スリークロバーです」
ナナカマドさんはそこで一旦話すのをやめ、土下座をして訴えた。
「私には仲間がいません。共に戦い、兄の仇を打ってくれる人がいません。どうかお願いです、私に、私に、力を貸してください」
イルミさんは土下座しているナナカマドさんに手を添え、泣きながら一緒に訴えた。
その反響は大きく、一時間も立たずして、一般市民のデモや抗議、抵抗が始まった。
軍隊はそれを鎮めるどころか、事情を知った人達は大半が寝返り、フォークロバー家の味方についた。
ドグマは予想外の展開に自宅に籠城と決め込んだ。
「くそ、奴を生かしておくんじゃなかった。うまくいったと思ったのに、早く殺しておくべきだった」
彼の怒りは止まらず、家具や壁に八つ当たりしたが、降参するという考えは微塵も持っていなかった。
一方イルミさん達は、袋の鼠となったドグマ達が自暴自棄になって、徹底抗戦に出て、被害が拡大する事を恐れ、遠巻きに様子を見ることにした。
ザネインはいちよう隠し通路はないか、転移の可能性がないか確認したが、あれは王家だけのものでここにはないとのこと。
それで時間の問題だろうと、安易に考えていたのだが、意外にしぶとく、あれから一週間はたった。
ザネインはその事を念話で僕に知らせてきた。
それを聞いた僕は少し興味が出たので行ってみることにした。ついでというか、こっちが本命なのだが、果たして生身で月までどれぐらいで行けるだろうか、ちょっと試したかったのだ。その事をザネインに伝え、近くに来たら転移魔法でザネインの近くに現れるから驚かないように皆んなに知らせておいてくれ、と念を押しておいた。
僕は月が真上になったところで行くことにした。チスイちゃんはヒトリに抱っこされながらもうおねむです。僕はヒトリにまるで近所のコンビニでも行ってくるような言い方をして、お願いすると、以心伝心が体に力をみなぎらせた。
軽くジャンプして徐々に加速する。加速が止まらない。ヤベー、今更ながら以心伝心の力に興奮して来た。
「艦長、地上より何かが上昇して来ています」
「スクリーンに映せ」
スクリーンに映ったものを見てみんなが驚く。
「あの時の少年か。なんてスピードだ。おい、あの少年はどこへ向かっている」
艦長の怒鳴り声に慌てて計算する。その計算結果を見て、
「月に向かっています」
「なんだと、生身で月に行くのか!」
艦長は今更ながらあの少年を恐ろしいと思った。そして、決して敵に回してはいけない存在だと思うのであった。




