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ザネインが行く事になって準備を始めた。特に問題は無かったが、うさ耳は必需品である。それをどうしたものかと考えていたら、メイド姉サクラさんが自分のを外し貸してくれた。渡す時顔が真っ赤になっていたことで、兎人族にとっては、人前でうさ耳を外すのは、僕たちで言えば人前で裸になるような恥ずかしいことなのかもしれな。(執事のメイプル・シロップさんは例外だそうです)
それを受け取り付けるザネインは真逆の意味で恥ずかしそうだ。
僕が「似合っている」と、笑いを含んだ声で言ったら、顔を真っ赤にして睨まれた。
サクラさんも鬼灯のなような赤い顔をしている。こうして見ると、うさ耳な無いサクラさんもとても可愛いなと思ってみていたら、ヒトリさんが怒ったような顔をして僕にチスイちゃんを渡してきた。僕が慌ててチスイちゃんを受け取ると、何故かチスイちゃんも機嫌が悪く、いきなり首筋にかぶりつき、勢いよく血を吸い始めた。
「あの、チスイちゃん。いつもより凄いんですけど。このままだと僕、貧血になるのですが」そう言うと、チスイはさらに勢いよくズウズウ音をたてながら血を吸いだした。
ザネインと誰が行くかとなった時、メイプル・シロップがいいだろうと思っていたら、
「私が行きます」
きっぱりと、イルミさんが言って、左のうさ耳についている紫のリボンを外した。それをみた兎人族たちは驚き、
「いけません。姫様、そのリボンを取ってはいけません」
メイプル・シロップは動揺を隠しきれず、声を大きくして言った。
僕がどういうことかと尋ねると、
「紫のリボンは王族の証。それを取るということは、王族を辞めるということです」
成る程そういうことか。すると王族は皆、紫のリボンをつけている事になる。それを尋ねると、当然ですとの返答。
「それじゃ、王族か判断する時はリボンを見れば分かるという事で間違い無いのですか」
「そうですね。私たち平民が拝顔する事は、失礼にあたるので、直視するような事はしません。ですので紫のリボンを確認する事で判断しています」
「それじゃナナカマドさんの顔を見てわかりますか」
「ハッキリとは……、それでも王族のリボンを付けていれば分かると思います」
そうか。それでは、ナナカマドさんが偽物という可能性もあるな。それならば本人の顔を知っているイルミさんが適任なようだ。
「よし、ザネイン。イルミさんと一緒に行ってもらう。危険だから、魔道具をたくさん持って行くように。必要な物があったら、遠慮せず買うように。いいね」
それを聞いたザネインの目が異常なほどに光り出した。僕は慌てて、
「予算は無尽蔵にあるわけじゃ無いからな」と、付け加えたが、大丈夫だろうか。
大丈夫じゃ無かった。余分にと多めに渡した金貨を全て使い、おまけにスフレからの借用書まで持ってきた。それを見てこいつと睨むと、ふん、と澄ました顔をして胸を張る。流石にその胸はコウメちゃんより小さいと言うだけの事はあった。