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一息着いてから、今度は、今の状況をメイプル・シロップが話し始めた。
「今から5日前のことです。イルミ様の父君でいらっしゃる国王陛下シロツメ・ミナール・フォークロバー様が何者かにより暗殺されました。その服喪期間も開けぬうちに、クーデターが勃発したのでございます。首謀者は国王の弟君ナナカマド・ミナール・フォークロバー様だと聞きました。今、ルナでは王族を中心とした粛清が行われています。我々は姫様に危害が及ぶ前にと、こちらに逃げてまいったのでございます」
メイプル・シロップは言い終わるとタオルで顔や首筋をまた拭く。
その間を利用して僕は考えてみる。
暗殺したのは誰だかわからないが、クーデターの首謀者は国王の弟だと分かっている。それならば自然に考えれば、暗殺者も弟と考えられるのだが、その辺をこの人たちはどう考えているのだろうか。
「それはあり得ません。絶対にあり得ません」
イルミさんが強い口調で言う。今まで一度も口を開かなかった人が、突然強い口調で言ったので、みんなは驚き注目した。
イルミさんは注目されたことに気づき、俯向きながらそっと囁いた。
「違います。お兄様はそんな事をする人ではありません」
堪えていたものが、俯いた顔から落ちてきている。王女という立場から気丈に立ち振る舞っていたのだろうが、まだ幼く見える彼女にはもう限界なのだろう。
隣のサクラさんがそっとハンカチを渡し、肩を優しく抱いた。
見ているとごく自然な行動に見えるが、メイドが主人である王女の肩を抱く仕草は普通は無いと思う。多分普段からこういった行動を許しているのだろうと思うと、王女であるイルミさんの人となりが分かるシーンであった。そして、この人に手を貸してやろうそう思った。
イルミさんの気持ちが落ち着いたところで、ナナカマドさんのことを詳しく聞てみることにした。
「私の母は、私が幼い頃に亡くなりまして、公務に忙しい父の代わりに、お兄様は私のたった一人の話し相手でした。いつも話すのは一方的に私の方でしたが、お兄様は何時間でもニコニコしながら聞いてくれました。そして、私が話す事がなくなり黙りますと、決まって頭を撫で『気分はどうだい』と聞いてくるのです。最初の頃は『もう子供ではありません』と、言って、頭を撫でられるのが嫌でしたが、だんだんと慣れてきて、今では、頭を撫でて欲しくて、お兄様とお話をするようになりました。そんなお兄様が、と考えると信じられません」
なるほど、話を聞いているとそういう事をする人では無いように思うが、大人は狡猾である。自分の欲望を満たすならそれぐらいのことを平気でする奴だっている。これは実際に会ってみないと分からないな。
しかし僕は身長が170cm近くある。行けば直ぐに怪しい奴だと分かってします。どうしよう。僕の代わりに行ってくれる人……!。
「ザネイン。サイズは幾つだ」僕が尋ねると、「60……って、なに言わせるんだ」と、胸を両手で隠し怒る。
「いや、胸のサイズじゃなくて、身長だよ」
「なんだ、身長なら身長と言え。サイズって言うから、胸のサイズだと思って、あやうく65だと言うところだったぞ」
みんなが「えっ」と、驚き沈黙する。その静けさのなか、メイドのコウメちゃんが「僕より小さいね」と、小さな声で言ったが、みんなにははっきりと聞こえていた。




