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意識が戻る。目を開けるとそこは薄暗いところだった。視線を感じ目を上に向ける。ヤギの頭、一つ目、虎の頭?、一角獣、ドラゴン、それぞれの頭を持つモンスターが僕を囲んでいる。
あれ?おかしいぞ。異世界召喚つったら勇者だよね。もうボス級のモンスターに囲まれているんですけど。これでどう戦えっていうの。確かにさ、どんな世界でもこの黒炎龍があれば無双出来ると言ったけどさ、これは無いな。うん無い。フルボッコでジ・エンドだ。僕きっと歴史に名を残すだろうな。召喚されてすぐに死んだ勇者として……。
僕はがっくしうなだれうずくまっていると、前方から声が聞こえた。
「私がこの魔王城主タワワニ・ミノル・チチという者です。今回の召喚に応えていただき有難うございます。魔人様」
え、たわわに実る乳?。僕が顔を上げると、そこには、レオタードのような服装で、本当にたわわに実った二つの双丘が……、じゃないだろう。なんと言った。魔人様と言ったような気がするが……。僕が魔人?、少々混乱気味になっていると、今度は隣の白髪のハンサムな人が名乗った。
「私は参謀を務めさせていただいています。サクリャク・インボー・ウラギールと言います」
わ、すげーうさんくさい名前。その時、
「魔王様、大変です」出入り口の方から声がした。
「何事だ」ウラギールが怒気を含んだ声で叫ぶ。
「は、し、失礼いたしました。可及的なことゆえお許しを」
「えい、早く申せ」
苛立ち気味に、ウラギールは兵士をみらみ急かせる。
「はい、勇者パーティーが魔王城に侵入しました」
それを聞いて、ウラギールは左手に持った杖を幾何学的な動きをさせ、空間にスクリーンを出し、勇者パーティーを映し出した。
通路らしき所に3人並んでいる。中心にいるのは剣士で、その左側が僧侶風の姿で、右側が魔法使いのようだ。基本的な構成だな。
さて、どう出るかな。
様子を見ていると、豚の顔した2足歩行のオーク?が、一列に並んで、中央の剣士に向かって襲いかかった。一匹倒れ、二匹倒れ……、五匹全員倒れる。それを見てて不思議に思ったので聞いてみた。
「あのう…、いいですか」
「どうしました。魔人様」ウラギールが僕の方を見る。
「この通路って、狭いの」
「いや、幅は3メートルくらいはある」
「へー、それじゃなんで一列に並んで戦っているの」
「それはな、ポリシーってやつだ。彼らのこだわりかな」
(え、そんなんでいいのかよ)
勇者たちが迷いなく歩いている。よく見ると、所々に矢印がついていて2階へ行く方向を教えている。そのことを聞くと、矢印がないと迷子になる輩が多く出るのでな、仕方なく矢印をつけた。……こいつらアホだ。
ここは何階だ。5階。勇者パーティーは、今、3階の階段を上っている。周りが慌ただしくなっている。戦うのかと思ってら、そうではなくて、逃げようかどうしようかで迷っているようだ。こいつら本当にアホだ。
僕はこの神斬り丸を確かめたい。だから。勇者と戦ってみたい。と言うと、みんな大喜びで、案内された。こいつら本当に魔族か?。
僕が待機していると、階段を上がり3人がやって来た。
そいつらが僕に近ずくと、剣士が、
「変な格好のやつがいるぞ」注意しろと2人に言ってる。
「へ、変な格好だあ。お前らの方が変な格好だぞ。まるで道化師じゃないか」
「ば、バカを言うな。これは勇者の正装だ」
真ん中の剣士が、顔を赤くして怒ってる。左右の2人も頷いている。3対1か、僕は何時も妹に言い負かされているほど口下手だ。口論になれば絶対負ける自信がある。こうなれば、実践あるのみだ。
「わからない奴には俺の剣のサビにしてやる」
よし決まった。グッジョブと心の中で親指を立てる。
「おい、聞いたか。あの剣、錆びるってさ。ただのクズ剣じゃないか。バッカじゃないの」
剣士が笑い。続いて両隣の2人も笑う。流石に顔が赤くなり、怒りが溢れて来た。
「ほう、それなら試してみるか。この剣の力を」
これも考えていた決めポーズだ。
すると、先制攻撃が向かって右側からくる。『ファイヤーボール』と唱え、火の玉が飛んで来た。僕はそれを剣で切る。すると火の玉が剣に吸い込まれていった。ちょっとびっくり。すごいぞ、予想以上だと感心していると、3人組はそれ以上に驚いていた。3人とも口が開きっぱなしでこっちを見ている。
呆然として動かないので、
「今度はこちらからだ」
と、これも決めポーズ。
素早く接近して、剣を高速に斬り刻む。
「これで終わりだ」
と、また、決めポーズ。決まったぜ、と控えめに親指を立てる。
僕が3人を見ると、勇者の剣は手元まで細かく砕けバラバラと落ちていった。続いて、3人の服が粉々に裂け散り、みんなスッポンポンになる。ふん、俺をバカにした天罰だと見ていると、向かって左に立っている僧侶風の人は女性だったようで、チッパイながら胸に膨らみがあるし、下半身はパイパンで、女性の可愛いワレメちゃんをもろに見てしまった。
僕も男である。それに、女性に対して意識をする年頃である。当然、免疫のない僕は、鼻血を出してぶっ倒れてしまった。