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この天井、つい最近見たことがある。
僕が視線を横に移すと、ボタボタという音が聞こえるほど涙を流している茜がそこにいた。
「バカ、バカ、お兄ちゃんのバカ」
茜は泣き叫びながら寝ている僕の胸に覆いかぶさってきた。僕は驚きながらも茜の頭をそっと撫で、落ち着くのを待った。
落ち着いたところで教室へ。僕の右腕は柔道の決め技を決められたような状態で廊下を歩くことになった。
恥ずかしいので茜に言ったら、目を三角にして睨まれた。しょうがないのでそのままで歩く。当然行き交う生徒たちはこちらをチラ見する。茜は同性にも異性にも有名人だ。その大胆な行動に、ある者は恥ずかしそうに、ある者は羨ましそうに、ある者は睨みつけるように悪意のこもった視線で見る。
僕たちが教室へ入ると、悪友岩部卓と川中拓海の2人がいて、僕を見ると珍しく冗談も言わず、大丈夫かとか心配してくれる言葉を口にした。そして、俺たち部活に行くと言って、教室を出て行った。
僕が鞄を取りに行っている間、茜は教室にいた友達と何か会話しているようだ。聞き取れないが、茜がみんなに慰められているように僕の目には映った。
僕が鞄を手にして歩いてくると、すぐに茜はみんなに挨拶をしてまた僕の右手に抱きついてきた。僕も今日は茜に心配かけたのだからと諦めることにした。
学校を出て歩いている時もやはり行き交う人は視線をこちらに向ける。その事がやたらと気になっていたのだが、後方からの悪意ある視線にはまるで気づ気もしなかった。
こいつ何故、僕の茜さんと腕組んでいる。茜さんも茜さんだ、なんで僕というものがいるのにあんなやつと腕を組んでいる……。
あっ、そうか。茜さんはこの男に何か弱みでも握られたいるんだな。そうだ、きっとそうに決まっている。許せない。人の弱みに付け込んで、僕の茜さんと腕なんか組んだりして……。
茜さん。見てて下さいよ。僕が君を解放してあげるからね。
横断歩道の信号が青になるのを僕と茜は先頭で待っていた。その時、茜の隣にいた親子連れの女の子が何かを落としたようで、気がついた茜は僕の腕を解放して、拾ってあげていた。それがすぐ後ろにいた男に行動を起こさせた。
カズキは後方から押された勢いで、車道へ飛び出て、乗用車に飛ばされた。その時カズキはまた茜を泣かせることになったと刹那に思った。
すぐに犯人は取り押さえられ、カズキは周りにいた人たちが呼んでくれた救急車に搬送され病院へと向かったが、意識は戻らず、寝たきりの状態となった。




