第1章 14歳になった僕は
第1章 14歳になった僕は
黒のロングコート、フィンガーレスグローブ、左目に黒の眼帯。これが僕の正装だ。玄関で黒色のブーツを履いていると、双子の妹、茜が近ずいて来た。
「お兄ちゃん、どこ行くの」
「秋葉原」
「コスプレ大会?」
「違うわい。これはな正装だ」
「せいそう?。どこかで掃除でもするの」
「その清掃じゃなくて、きちんとした服装の正装だ!」
僕は靴を履き立ち上がると、決めポーズで服装を披露した。
「どうだ。決まっておろう」
僕は眼帯を取り、青色の左目に左手を当て、決めポーズをとる。
「はいはい、今日は真夏日になるって、天気予報で言ってたよ」
最近の茜は生意気だ。何かと僕に突っかかって来る。僕が兄だと思っていない。確かに、勉強は僕より出来るし、掃除洗濯に料理、家事全般はみんな任せっきりだけど、僕はお前よりほんの少しだけど早く生まれたのだ。だから偉いのだ、と心の中で文句を言って、家を出た。
僕が何故正装かというと、本日とうとう僕だけの剣を手にするからだ。僕は今まで自分自身の剣を見つけられないでいた。それが、数日前のことである。ネットで動画を見ている時、日本刀の動画を観て、僕のソウルが震えた。それで僕の剣が決まった。名前も決まっている『黒炎龍』だ。かっけー。
ついに、ついに、手に入れた僕の剣。その名も『黒炎龍』だ。知る人は知る名剣、かつて、黒炎を剣に纏い、ドラゴンをも一刀両断したという伝説の名剣。(自分の心の中の設定)
自然と帰る足が軽くなる。しかし、今日は暑いな。近くに公園があったはずだ、そこで休憩しよう。
日陰になっている長椅子に座り、公園内を眺める。暑いせいか誰もいない。これなら大丈夫だ。僕は考案していた剣を持った時の決めポーズをここで試すことにした。
黒炎龍をケースから出す。手にした時の快感はもちろん最高。カッケー。
「目覚めよ黒炎龍」
僕は手に剣を持ちいろいろポーズをとる。余計に熱くなった。汗が吹き出てきた。
ふと視線を感じ周りを見ると、小さな男の子が不思議そうにこっちを見ている。
「ママ、あれ何」
「見てはいけませんよ。早く行きましょう」
慌ててお母さんらしき人物が男の子の手を取り去って行った。
ふん、分からない者には分からないさ。黒炎龍を手にした今の僕は無敵だ。どんな世界だろうと無双できるぜ。すぐに異世界に勇者召喚されてもいいぞ。ふふふふ……。
その時、地面が光ったような気がした。来たのか、異世界召喚?。僕の意識は遠のいていった……。