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上空から教えられた王宮を見下ろしていた。
空が白みかけた時、行動を起こした。
ドアを蹴破り派手な音を出しながら中へ入る。
当然部屋の主人は起き上がり誰何する。それには答えず、ズカズカと近づく。
すると今度はアホなのかバカなのか助けを呼ぶ。
「お前はバカか。僕は廊下から入ってきたのだぞ。誰も来るわけがない」
それを聞いた部屋の主人は顔を赤くして体を震わせ叫ぶ。
「よくもわしを愚弄したな。わしはこの城の主人ドメス・キラールだぞ」
「お前がドメス・キラール」
カズキは右手を握り、わなわな震え、怒りの感情を抑えきれずに、
「お前が、ユトリノ・サルドールさんを殺すように言ったのだな」
「それがどうした。わしは偉いのだ。私こそがこの世界の王なのだ。だから皆、わしの言うことを聞いていればいいのだ。それをあのクズは、鬼の子を渡せと言っても、言うことを聞かない。だから殺せと言ったのだ。なぜ悪い」
異常な思考。こいつの頭は腐っている。こんな奴は生きている価値も資格もない。カズキの心に殺意が膨れていった。
ドメス・キラールは相手の出方を伺いながら、バルコニーの方へ少しずつ退がって行った。
カズキは少しづつ距離を詰めて行く。
ドメス・キラールが突然壁の方へ走り「死ね」と叫び、壁の一部を叩く。
カズキの立っている床が消えるが、カズキに何の変化もない。ただそこに立っているだけだ。
それを見たドメス・キラールは一瞬口を開けた阿保ズラになるが、我にかえると、これならどうかと、横の壁を叩いた。すると、カズキへ左右から槍や矢が飛んでくる。それを見たドメス・キラールはキャハハと高笑いして、死ね死ねと叫ぶが、その顔が恐怖に変わるのに時間はかからなかった。
「どうかしたのか」
一言言ったカズキに、刺さった槍や矢は一本も無かった。
「ば、化け物」
恐怖に叫び、ドメス・キラールはバルコニーへと出て行った。そして、下を覗くが、飛べる高さでもなく、また、こちらを見る。
「ま、待ってくれ。金が欲しくないか。いくらでもいいぞ、好きなだけ与えよう。それとも女か。好みの女を言ってみろ、すぐに用意しよう。それ以外でも、何でもいいぞ、言ってみろ」
ドメス・キラールは必死で叫ぶ。
「それなら一つある」
「そうか言ってみろ。望みを叶えてやろう」
「それなら遠慮無く言おう。お前の命だ」
カズキは左手を前に出すと、ドメス・キラールの体が宙に浮いた。そして、バルコニー上部の壁に貼り付け状態にする。
カズキはそのドメス・キラールに、槍と矢を突き刺していった。淡々と無表情に……。
そこへウラギールがやってきてカズキに近づく。カズキは気配で知り、振り向きもしないで、
「終わったのか」
「4人は私が始末しました。後の2人はアジトを殲滅させ、自爆いたしました」
カズキは何も言わず、壁に複数の矢と槍に刺され既に死んでいるドメス・キラールを見ていた時、突然皮肉な笑みを浮かべる。そうか、そう言うことか。今自分が何故、勇者じゃなく魔人なのか得心したのだ。そうだよな、勇者がたとえ悪人だとしても、こんな事をして平気であるはずがないのだ。だから僕は魔人なのだと、今、はっきりと理解した。
その顔を見たウラギールは、この人なら私の願いを叶えてくれるのではないだろうかと、淡い期待を抱き始めた……。