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優勝賞金は国王自ら授与するそうで、王宮に招待され、今、一室のテーブルについている。
国王が入室されたので、僕とザネインが立ち上がろうとすると、それを手で制止してテーブルに着くと、
「私が国王のユトリノ・サルドールだ」
気さくに自己紹介した。そのあと僕とザネインが自己紹介し終わると、
「わしはお腹空いた。食事にしよう」
後ろに立っている執事に合図を送る。
食事が準備されている間、国王を見ると、白髪混じりだが口ひげを蓄えているところは国王然として、風格がある。
出された料理は見た目も美しく美味しそうに見えたが、食事を堪能する余裕はなかった。それは国王から優勝賞金を授与されるということが、過去にないと聞かされていたからである。そのことが気になり、裏があるような予感がする。そう考えると気になって食事どころではなかった。隣で、ばくばく食って、美味しいを連発しているザネインがちょっと羨ましかった。
そのうちにだんだん頭にきて、その能天気な頭に、脳天チョップを入れたい気持ちが湧いてきた。
食事が終わりティータイムに入る。その時になっても国王は、今大会の話や僕のことを聞くばかりであった。僕のことは、おそらく探りを入れているのだろうと想像がつき、慎重に言葉を選んでいるのを、ザネインは口下手だと勘違いしてか、立て板に水で、有る事無い事、無いことは言ってないが、言ってはまずいだろう重要なことを自分の事のように喋った。それを国王は目を細めニコニコしながら聞いていたが、明らかにこちらを探っていることが分かったし、好々爺然としながらも、時折見せる鋭い視線は、この国王も只者では無いことがうかがわれた。それをうまく乗せられポンポン喋るザネインは、胸と同じように頭も残念であった。
あらかた喋り尽くしたザネインは、満足してゆっくりとティーを楽しんでいると、国王も納得したのか、執事に耳打ちしていた。そして賞金が運ばれてくると、またザネインは、自分のものだと言わんばかりの視線を向る。
その後に、男か女かわからない人を兵士が連れて来た。奴隷なのだろうか、様子を伺っていると、国王は、この子は鬼族で、今はこの世界にたった1人の鬼族だと言った。確かに注意してみると頭部に小さいが左右にツノがある。
国王はこの子をカズキ殿に預けたいと言ってきた。そして、驚いたことに頭を下げた。
これには僕も驚き反射的に頭を下げ、事情を尋ねると、副賞ということにしてくれないかと言って、言葉を濁した。
これが僕に探りを入れていた答えなのだろうか。そう考えると、僕が国王のメガネにかなったことになるし、事情は知らないが預かることにした。
これで全て終わり帰ろうとした時、国王はまた明日の晩餐に来てはくれないだろうかと言ってきた。僕は暫く考えていたが、この国と友好関係を築くのは良いと思い、後2人ばかり連れてきても良いだろうかと尋ねると、国王は快諾した。
帰ってきてから、チチとウラギールには明日晩餐に招待されたから、参加するように言った。チチは僕が連れてきた鬼の子を見て、睨んでいたが、それを聞くと鬼の子はどうでもよくなったのか、有頂天になって、明日は何を着て行こうかと、意識はもう明日に飛んでいった。
ウラギールには転移魔法は使えるか尋ね、使えるとの返答を聞いて、これからは頻繁に行き来出来るようにしてくれと頼む。
夜も更けってきたので風呂に入って寝ることにした。鬼の子は僕の服を掴んで離さない。そう言えば、名前は僕がつけるようにと言われていたことを思い出す。しばし考え、
「君の名前は今日から『ヒトリ』な。分かった」
僕が言うと、ヒトリはこくりと頷く。言葉は話さないが、こちらの言うことは理解しているようだ。今は警戒しているから話さないかもしれないが、いずれは声を聞いて見たいものだ。
僕は風呂に入ろうとすると、服を掴んで離さないヒトリは当然ついてくる。しょうがないから今日は2人で入ることにした。
僕が服を脱ぐと、ヒトリも脱ぐ。
ヒトリは脱ぎ終わると前も隠さず立っていた。自然と視線が向く。胸はザネインようように無く男の子だと思う(ザネインは女性だ)。で、視線は当然のように下へ。無い。女の子かと思いきや無いのだ。つまり、ツルツルで何も無いのだ。これってどういうこと?。中性ってことなのだろうか。わからないので明日にでも国王に聞くことにした。
今はとにかく眠い。わからないことは明日にして、とにかく寝ることにした。