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ベスト8からは試合数が少ないので昼からとなっている。それなのにザネンは早朝から来て、早く行こうと催促する。こいつ、あの町が相当気に入ったようだ。しょうがないから僕もすぐに着替え、鏡のある部屋へ。当然のようについて来たチチさんには、いちようニコリと笑い、あなたはお留守番ね、とやんわり。また、わーーんと子供のように泣き、
「私、魔王やめる。魔王やめるから連れってって」
こいつ本当に魔王か。ちょっと可哀想になるけど、バイバイの手を振り、回廊へ。さらに一段と大きくなった泣き声を後にして。
町は早朝だというのに意外にも賑わっていた。
あちこちで今大会の話をして盛り上がっている。時々、僕の話も出てきて、聞き耳をたてると、今大会終了後は、Aランクに上がるのは確実だろうとのこと。あまりの高評価にちょっと恥ずかしい。
「朝飯食べようか」
ザネインと連れ立ってサエちゃんのところへ。中はいっぱいだったので、少し待つ事にした。一斉に客が出たので、入れ替わって中へ入る。サエちゃんとお母さんが笑顔で挨拶をくれ、僕も笑顔で挨拶のお返し。2人で朝食のお勧めを頼む。
出されたのは、ご飯と、スープ、干物の魚、それと、たくあん?のようなもの。味の方は……、聞かないでくれ。全部食べれたのでよしとしよう。
さて、お腹も満たされた事だし、大会のほう覗いて見ますか。
トーナメント表を確認してからザネインと商店街へ。
ザネインはみんなから頼まれていたのだろうか、メモを見ながら、あれやこれや買いまくり。店主も上玉の客と見れば商魂魂が燃え、熱くて近寄れない状態だ。ちょっと離れたところから2人の様子を見ていた。結局、昼近くで買い物がようやく終わったようだ。
「予算オーバーしたから、昼からは稼がなくっちゃ」
ザネインは満足のいく買い物ができた事に、嬉しそうだが、口にした言葉は、昨日のことがあるので、目立たないようにしてね、といちよう注意した。
初戦の相手は、かなりの強敵のようだ。何故ならば、腕輪の損傷が少ない。しかし、慎重に様子を見ることはしない。積極的に攻めて、攻めて、試合を長引かせない。これからの試合は連戦みたいなもの、だから攻める。
先手で打って出る。上、右、左、下、突き、とあらゆる角度からの連続攻撃。それを、全て受けるのはさすがだが、スピードを上げると、徐々に苦しくなり、隙ができる。そこに剣を打ち込み、笛がなる。
「勝者、カズキ」
次の試合も、その次の試合も、そうして勝利する。
いよいよ決勝戦。相手はSランク。出て来たのはフルメタルの鎧だった。
この試合のルールで、フルメタルの鎧とはどういうことだろうか。不利以外の何物でもないと思うのだが、何かわけでもあるのだろうか。
僕が考えていると試合の合図の声がする。
素早く、フルメタルの鎧が飛んでくる。僕は構え遅れ、後方へ下がりながら受けに徹する。どうにか攻撃を凌ぎ、間合いを取り、相手と対峙する。
すると今度は、短距離スタートの時のようなクラウチングスタイルに身を鎮める。
左目に相手のステータス値の上昇が表示される。全ての数値が8000を超える。これ以上はやばい、そう思っていると、相手は一気に差を詰めて、剣を僕の右下半身から左上へと薙ぎ払う。
一瞬の静寂の後、勝者が告げられる。その名は意外なものであった。
「勝者カズキ」
誰もが信じられなかったが、フルメタルの鎧の腕から腕輪が消えている事に気がつく。
この状況を理解するものは、この闘技場で、カズキただ1人だった。フルメタルの鎧の人も、勝ったと信じていただろう。ただ、なんの手応えもなかったことは事実で、それだけに、勝ったという確証はなかったが、それでも負けたという確証もなかった。それだけに、フルメタルの鎧の人は、カズキに詰め寄ろうとしたのだが、レフリーの制止により、180度反転して去っていった。
Fランクが Sランクに勝ったということをやっと理解した観客は、割れんばかりの歓声を上げ、今大会が閉会した。




