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♢♢♢2-3
僕の番がきた。ザネインにはお金を預け、全額、僕に賭けるようにお願いしといた。
さて行きますか。
闘技場に入ると、すり鉢状のような形状で、観客の多さに驚いた。大歓声の中、対戦相手はニヤついていた。僕がFランクだから楽勝だとでも思っているのだろう。
「はじめ」の合図とともに、対戦者は飛びかかってきた。
僕の目には隙だらけで、目をつぶっていても倒せそうだ。とりあえず隙だらけの胴に剣を入れる。後は相手の勢いでダメージ倍増。
レフリーの笛で決着が告げられる。
「勝者カズキ」
観客の歓声とともに笑いが起きヤジが飛ぶ。
「おい、あいつFランクに負けたぞ」
「Bランクとか書いてたけど、実はFランクでしたってオチじゃないのか」
「ぎゃははは、ちげえねえ。あれはFランクだな」
負けた対戦者は、がっくし肩を落として去って行った。
次の対戦までは当分時間ありそうなので、ザネインのところへ行ってみた。ザネインを見つけると、背中に羽でも生えて飛んでいるような状態だった。
そのザネインが僕の方へ駆けてきて、Vサイン。たんまり入った袋を見せる。
次の対戦までの間、腹ごしらえをしようと、露店を見て回った。
串刺しの肉、フランスパンみたいなパン、それとスープを買い、店の横の椅子に座り食べる。
串刺しの肉はスジ肉でちょっと硬いが、醤油をベースにしたような味付けは悪くはなかった。パンはフランスパンを少し重くしたようなもので、そのせいか、もさっとした味で、これだけでは食べずらかった。それをあっさり目のスープで喉に流し込むと、意外と食欲が進んだ。パンとスープの組み合わせは、ここでは絶対かもしれない。
腹も膨れ満足したところで、トーナメント表を確認しに闘技場の方へ行く。
トーナメント表を見ると、一回戦半数は終わっていた。勝ち上がってきたのは、みなAランク者で、番狂わせだったのは僕だけのようだ。
2回戦のアナウンスが流れ始まる。
僕は2戦目で、相手は当然Aランク、それも常に上位に入る強者だそうだ。これで、今大会のAランク者の強さが測れるだろう。ちょっと楽しいかも。
アナウンスで呼ばれ闘技場の中へ入り、対戦者と対峙する。
流石に初戦と違って隙がない。
「はじめ」の合図で戦いが始まるが、初戦のように、馬鹿みたいに突っ込んではこない。こちらの技量を測っているようだ。この辺がAランクということか。僕も様子を見ていると、左目に数値が現れ、数値が上昇する。
STR 800→1200
DEX 650→800
VIT 750→900
AGI 800→1150
INT 500→850
数値の上昇には驚いたが、どれも危険的な数値には程遠いところで止まる。
対戦者がじれたのか、左手一本で剣を持ち、リーチを活かした戦法で、腕を伸ばし突きで突進してくる。これはフェイクだ。こちらがどう受けるか技量を試してのことだろう。さて、どうしようかな。そう考えている間に剣は目と鼻の先に迫っている。なおも避けないでいるから、対戦相手は踏み込んではいけない領域、つまり、相手の剣の届く範囲にまで踏み込んでしまった。受けるのではなく、ギリギリのところで避けたため、対戦相手はミスしてしまったのだ。当然、僕の剣は隙だらけの体にめり込んだ。
「勝者カズキ」
番狂わせの一戦で、観客の歓声が盛り上がった。
ザネインのところへ行くと、金貨の袋が大山になっていた。流石にこれはカッパギ過ぎだな。ザネインに言って、今度から一袋ずつ賭けることにした。
3回戦は昼過ぎになるので、お金もあるし、美味しいものでも食べに行くことにした。
時間帯が時間帯なのであちこちでいい匂いがする。さてどこにしよう。選り取り見取りでかえって迷ってしまう。しばらく、ウロウロキョロキョロしていると、小さな女の子が近ずいてきた。
「ねえ、お兄ちゃん達。お腹減ってない」
僕の服を引っ張りながら、見上げている。すごく可愛い。つい頭をなでなでしてしまった。
「あっ、ごめん」
つい頭を撫でたことを謝り、
「僕たち食事をしたいと思っているんだけど、どこかいいところ知っているか」
少女はニッコリして、
「私のお母さんのご飯、美味しいよ。こっち」
少女に手を引っ張られて行ったところは、小さく粗末な建物で、中も狭かった。少女は、
「私のお母さん。料理はとっても美味しいの」
と、嬉しそうに紹介してくれた。その人は、笑顔で軽く挨拶すると、
「何にしましょうか」
と、注文を聞く。僕は何が良いかわからないので、ご飯ものがあれば、それのお勧めをお願いした。ザネインも同じものを注文した。
出されたものは、丼もので、ご飯の上に煮込んだ肉をのせたものだった。味は、肉が柔らかく、ご飯にも煮込んだ汁が染み込んでいて、意外にもというか想像以上に美味しかった。
満足した食事のお礼を言って、闘技場へ。