収穫祭とマスコット
「なるほど植物系のモンスターはしっかり野菜の味がするんだな、見かけだけだと思ったが血の味もしないし限りなく植物に近い生き物って考えたほうが……」
植物系の魔物と木の形の魔物が落とした実などを食べて感激しているが、まあ普通魔物をここまで食べまくる奴もそういないか。まあ俺としては鞄の中の野菜類の節約ができるため嬉しい誤算。結構補充させてもらいたいところなんだがどうすれば効率よく収穫できるか……。
「にしても走る大根のようなモンスター、とは違うが味も見事に大根。おかげで久しぶりに大根の味噌汁が飲めた提供してくれてありがとう」
「キィ」
「うんうん、美味いか」
俺のすぐ近くに座って同じく味噌汁を啜っている魔物。その見た目は白い肌にところどころに葉と花が存在している地面につくほどの緑色の長い髪、濃い紫色の瞳、でなおかつエルフのような長い耳を持つ30センチほどの服を着ていない小さな子供。
この魔物理屈は分からないが意思を持たない大根のような物を生み出し操る事ができる能力がある、しかも倒しても消えないし普通に食えるようだ。普通に切って現在進行形で味噌汁にして食べている。
というより俺が食事をしていたらこいつが近づいてきて遠慮なく提供してきたからなキラキラした目で。始めての友好的な魔物だ。
本当になんでこの世界は米もあるし醤油と味噌も名前は全然違うがあるというのに大根がないのかと思っていたが正直この迷宮に迷い込めて良かったと本気で思う。
俺が普通に意思疎通できることと俺の作った料理のせいで舌が肥えてしまったらしく仲間になる事が決定した。普通に餌付けな気がするが気にしない。俺にしてもこいつにしても。
「さてとお前に名前をつけないとな……テイム・モンスターにしておいたほうが色々良いだろ」
テイム・モンスターとは人に名前をつけられ使役される側となったモンスターの事、使役したモンスターのステータスは自分の水晶球から見ることが可能となる、と本に書かれていた。にしても名前か……期待した目でこっちを見ているからな……。
「じゃあ……レティアとかどうだ?」
「キィ♪」
「気に入ったのなら良かった良かった……でちょっと待ってろ」
実は大根のドイツ語であるレティヒとゲームなどで出てくるアルラウネから名前をつけたが名前らしい名前にはなったからいいだろ。首を傾げているレティアの前で鞄の中から布を取り出しメジャーでレティアの肩幅等を測る。それから服を作るために布を魔術式で切断。よしズレはなし。
こっちの世界でしていたバイトの中に服飾関係もあって縫製作業も体験済み。縫うのも魔術式だ。そうして薄緑色のワンピースの完成。髪もワンピースと同色のリボンで結んだような形にして……。
「今は手持ちの布的に簡素だが町に行けたらもっといいのを買ってやるから今はそれに慣れとけ。枷やら首輪やらは嫌だろう……って聞いてないか」
明らかに始めて着た服にはしゃいで聞いていない、てっきり服を忌避するかと思ったがこの様子なら大丈夫そうだ。そしてレティアのステータスを確認。
名前 レティア
レベル 35
種族 マンドレイク(突然変異)
性別 ♀
称号 テイム・モンスター テイマー大好き
属性 風
体力 300
力 60
耐久 100
器用 300
俊敏 1500
魔力 350
スキル:悲鳴・歌声・マンドラゴラ生成・生成物操作・毒無効・麻痺無効・沈黙無効・気配察知・魔力察知・風の加護(緊急時俊敏2倍)
「…………あーなるほど」
見ただけで俊敏の数値が桁外れ、危ないと思ったら速攻で逃げているのだろうと推測。それにしても悲鳴。魔物特有の技なんだろうが名前が名前なだけに無理に使わせたくはない。
さすがに可哀想だ。技を使わせるために仲間に悲鳴を出させるとかどこの鬼畜だ。
ついさっき会ったばかりだというのに相当懐かれたんだな。称号を見れば一目瞭然だった。
それにしても大根はマンドラゴラだったのか。なるほどそれなら世間の市場になくても仕方ない……と思っておこう。
「キィ!キィ!」
「んっ?俺のを見たいなら別にいいぞ」
名前 サトリ・シキノ
レベル 41
年齢 16
性別 男
職業 魔術式師
称号 テイマー
属性 (概念属性・知識欲)
体力 426
力 172
耐久 213
器用 391(3100)
俊敏 365
魔力 446
スキル:言語理解・収納保存・術式瞬間構築・体外魔力使用技法・隠蔽術・麻痺耐性・毒耐性・魔力瞬間圧縮・(概念の加護(知識補正))・複数構築・遠隔構築・多重並列思考・多重統合・魔力封印無効・魔力妨害無効・知識補正・魔力認識・魔力生成・魔力吸収・魔力供給・魔力分解・条件付与(魔術式)・条件発動・魔力回復補正
あれから軽く20階は降りて来たためレベルも着実に上がっている。まあ見せたらこっちを見られたが特に属性と器用の所を見て目を擦っていた。条件付与で俺のパーティーメンバーかそれに準ずる者には正常なステータスが見えるように仕掛けをしたがどうやら上手くいったらしい。
「キィ?キィ?」
「残念ながら見間違いじゃない。なぜかこんな斜め上に成長してな正直概念属性に関しては俺も分からん」
「キィ」
こうして見た目が可愛らしい旅のお供ができた。その戦闘方法は歌声に他の魔物が聞き惚れている間に生成したマンドラゴラを操作して数でタコ殴り。俺にはなぜか効果がないようだが歌声に魅了効果がありボコ殴りされている間も恍惚とした様子で聞き続け安らかな顔でご臨終。コレを見てある作戦を考えついたので……。
「お前のおかげで大量収穫できた感謝するぞレティア」
「キィ!」
こいつの歌声に引き寄せられて来た奴を片っ端から仕留め補充できて今日は久しぶりに豪華な食事をしようと肉と大根と野菜のおでんを作って一人と一匹で楽しく食事をした。周りに怯えの感情を抱いた魔物がいるようだが気にしない。