異世界でのステータス
「ようこそ私達の世界アルクレムへ異世界の勇者の皆様方。私は大神官の地位についておりますアルヘル・ヴォルターと言う者、そして玉座に座るのがこの国の王であり貴方方を呼び出した」
「レイアス・ロギス・アストレアだ、よく来た勇者達よ歓迎する」
笑みを浮かべ歓迎の言葉を言うファンタジーに出てくるような服を着ている男が二人。
そして普通の教室から明らかに普通に生活していては入る事がない慣れない様式の立派過ぎる部屋への移動……というか調度品からして普通じゃない。
そんな状況であるため大半の者は混乱して事態を把握できていないために騒いでいない、俺は黙って王の方を向いていた。
……正直すでにこいつらを信用する気は無い、まあ顔に出さないように気を付けてはいるがな。
「私達を家に帰して!」
「そうだ!勇者だとか訳わからない事を言うなよ!!」
だが落ち着いて来ればそうもいかず、家に帰りたがる者から怒りを抱き大神官と王と名乗った者達を睨みつける者も。
まあ、こちらからしたら誘拐だが、あちらさんからすればどうでもいい事だろ……さっさと本題に入ってほしいもんだ。
俺は文句を言っても無駄だと判断し話を聞くのに徹していた、全く大神官と王を信用する気がないのも継続中。
「大神官ここからはオレが説明する、お前は黙っていろ」
「はっ!」
テンプレと言えばテンプレと言えるだろうが原因不明の魔物の異常なまでの行動の活発化、明らかに突然変異で発生した個体の大量発生。
……しかし問題が一つそれは直接的原因が分からないこと、せめて原因を究明してから呼べ。
「王家の書庫の書物から過去に似た案件がないか調べた結果、それを勇者が解決したことが分かり王家に伝わる女神から授かったとされる異世界から勇者を呼ぶ召喚陣を使い勇者であるお前らを呼んだ・・・返すための術、返還術もあるが条件を満たさなきゃ使えない、そういう理だ」
「ですが私たちは今まで戦いとは無縁の生活をしてきた、だから正直大層な事ができるとは思えない・・・はっきり言わせてもらう私たちは素人だからな」
代表としてそう口に出した委員長、実際異世界召喚された者達の中心と言える。
実際委員長が言う事は事実。普通に日本の学校に通っていた高校二年生、戦う術など持っていない方が当たり前。
「それは問題ないかと!すぐに皆様に力がある事はすぐに証明されます!」
出てきたのは小さくシンプルな水晶玉、それが俺も含めた召喚された全員に支給された。
「異世界の皆さまは知らないと思われるので説明します、その水晶に血を吸わせ馴染ませればステータスと念じる事でご自身の能力を客観的数値で見ることができますので確認をしてその内容を報告してください、こちらで皆様にあった装備を整えるなどの援助もする必要がありますので」
話を聞き軽く半信半疑で血を出し水晶に垂らすとすぐに血は水晶に取り込まれ水晶が光を放つ、しばらくするとその光も収まる、どうやらこれで馴染んだらしい。
そして次々とステータスを見ていく中で俺は他の者達が報告をするのを聞いていた、誰がどういう能力か確認したかったからな……。
名前 コウヤ・トウドウ
レベル 1
年齢 16
性別 男
職業 戦士
称号 異世界から召喚された者
属性 火
体力 400
力 400
耐久 500
器用 100
俊敏 200
魔力 100
スキル:言語理解・身体再生・身体強化・火の加護(攻撃力強化)
名前 ユキ・アメミヤ
レベル 1
年齢 16
性別 女
職業 治癒術師
称号 異世界から召喚された者
属性 光、水、風
体力 80
力 150
耐久 120
器用 200
俊敏 200
魔力 600
スキル:言語理解・複合魔法・治癒術・高速魔力回復・水の加護(治癒術強化)・光の加護(防御魔法強化)・風の加護(魔力探知能力強化)
名前 シノブ・ハナミ
レベル 1
年齢 16
性別 女
職業 剣士
称号 異世界から召喚された者
属性 雷
体力 300
力 200
耐久 150
器用 300
俊敏 400
魔力 300
スキル:言語理解・剣術・抜刀術・加速制御・気配察知・雷の加護(俊敏強化・極)・雷化
……で、俺が聞いている限りトップクラスはこの3人、だが他の奴も大神官が本当に驚いているからこちらの基準と比べれば遥かに優秀なのだとよく分かる……普通に数倍だからな……。
で俺も回りからすればかなり遅いだろうが自分のステータスを確認……色々心配だが……。
名前 サトリ・シキノ
レベル 1
年齢 16
性別 男
職業
称号
属性
体力 50
力 20
耐久 20
器用 50
俊敏 50
魔力 60
スキル:言語理解・収納保存
……三桁のステータスがなく技能も少ない、もはや空欄まである始末と……それを気にする事もなく大神官に普通に報告したがあからさまに苦々しい顔をされた。
この分かりやすさにだけは好感が持てた。分かりやすいってのは良い事だからな。
「あはははは!なんだよステータス雑魚じゃねえか雑魚!というか職業、称号、属性は書かれてすらないとか笑えるぜ!」
「そりゃこいつオタクだし、しゃあねえだろ!自分でも認めていたしな!!」
「ほ、本当にこれは酷いにも程があんじゃね?」
実際俺のステータスは余りに脆弱、そのため鈴木が大声で馬鹿にし取り巻きもそれを助長。
まあ実際鈴木とその取り巻きでも俺の数倍のステータスを誇っている。
「あー良かった」
「はっ?」
そう言いながら俺は笑う。すぐに信じられない物を見たかのようにこちらを見て来た、残念ながらお前たちが見ている光景は事実だぞ。
「な、なんで笑ってんだ!」
……まあ、理解できないのは分かるが俺は実際嬉しいのだから仕方ない、なにせ不安要素が何もなかったのだから……そう個人的事情な不安要素がな……。
「俺はこれでいいと心の底から思っているからな笑いもするだろ?理解してもらう気もないし理解された気にもなってもらいたくないからはっきり言う俺はこれでいい。弱い?脆弱?そんなことは見たら分かる。だがそんなのもの試行錯誤してどうにかするからご安心を」
そう生き残るためにはステータスが必要な事は俺も分かっている、それでも喜びの方が強かった。
本当誰も想像しないような理由だろう俺が俺である事が嬉しい、識乃覚であることと書かれて困る事が書かれてなかった。
口に出していれば疑問しか生まれない理由、だからこそ俺は口にしない。
そうして王や大神官すら戸惑わせた俺は自分の番は終わったと言うばかりに本を鞄から取り出し読み始める、奇異の眼を向けられても何とも思わない。こいつらにどう思われようがどうでもいいことなのだから。