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知識狂いの異世界録  作者: 心乃月日
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プロローグ


簡単に自己紹介をしておくと俺の名前は識乃覚しきのさとり、学校のクラスの連中からはオタクやら根暗やら言われている類の人間だな、幸い怪我をするようなことはされていない。


で今は金曜の昼休み、まあ俺は授業その物が好きなので苦ではないが大半の学生が明日どこに行くか何をしようか考えているだろう。


実際俺も多趣味だから何をしようか考えることが多いしな、でだ。


「まーたあの根暗は本読んでやがるぜ?友達いねえのかよ……っているわけねえか、こんな良いとこなしのオタク野郎になんかに」


明らかな悪口それを言っているのは鈴木美月すずきみつきと言う性根が多少アレな同学年、その周りにはそれに同意するかの如く笑っている者が数人。


でその悪口を言われている張本人である俺は椅子に座り机の上に本を五、六冊ほど重ねたうえで読書中と。


まあ俺の容姿は黒縁の眼鏡をかけ染めた形跡がない黒髪に黒い瞳そして高校二年の割には小柄な体躯と童顔なのもありいかにもイジメの標的にされやすいタイプだからな。


あとはタイミングか?約一週間ほど前に進級し新しいクラスになりグループが出来上がっていく中で俺は一人で本ばかり読んで孤立しているからな。


「はいはい言いたければ好きなだけ言ってくれて構わないぞ、実際極度の本オタクなのは認めているし友人を作る暇があったら本を読むことと趣味に費やす方がよっぽどいい」


「あははオタクが開き直りやがった、これは笑え……」


「うんうん、こんなオタクに関わっている方が無駄なんだからいい加減やめたらどうだ暇人じゃあるまいし」


あくまで見た目だけはだが、正直口が悪い自覚もある。


ある意味これは昔取った杵柄なんだが、まあそれは置いておいて……牽制もしておかないとな?


「あと暴力をしてきてもいいが病院に行ってカルテ作ってもらうから遠慮なくどうぞ。ちょっと世間沙汰にするだけだからな」


遠回しに証拠を作って問答無用で報復すると言っておく、正直読書は静かにしたいからな。


「……チッ!」


予想通りその発言にビビッてそれ以上は何も言わなくなったがそれでも舌打ちを忘れない、それを見てから再び本を読もう視線を戻す。


「おい」


「んー……東堂か?」


俺に話しかけたのは身長180を越え体つきもしっかしした男、髪は茶色に染めあげられている彼の名前は東堂孝也とうどうこうやと言い不良って事で有名だったか?


「暇だからこれ借しやがれ」


「無理」


本を読む事を優先して理由を言うのをさぼり一言で済ませたが少なくとも貸す気がない事は示したからいいと思ったのだが。


バンッ


机が叩かれる音がしたので顔を上げれば東堂の額には青筋が浮かんでいた。


「せめて貸せない理由ぐらいは言うべきじゃねえのか?ああ?」


「これは借り物だから貸せない、さすがに又貸しする気はないぞ、じゃあもういいな」


質問に答えた俺はすぐに本に視線を戻す。


東堂が貸せと言ってきたのは一般的にライトノベルと言われる類の本だがそれは俺の両親が面白いからと渡してきた物。


ようするに両親の私物だからなそれをそんなに親しくない奴に貸す義理がない、と。


両親はアニメとかゲームとかラノベが大好きなオタクだ、両親に付き合ってゲームをする時もあるが俺は両親と比べればそこまでか。


……さすがにガチゲーマーな両親には勝てないからな。


「てめえはすぐに視線を本に戻すんじゃねえよ!」


「俺は本が読みたいだけなんだからいい加減にしろ東堂」


「おい俺が悪いように言ってんじゃねえぞ識乃」


もう面倒になってきた俺は今度は目線を本から外さず淡々と受け答えをする。


俺の態度が火に油を注ぐような物なのは理解していたが東堂がキレた。


これはいつ掴みかかるか分からない状態だなと……いっそ正当防衛で殴るか、邪魔され過ぎて少し不満が溜まってきたからな。


「孝ちゃん落ち着いて!識乃くんがマイペースなのはいつもの事でしょ!」


「孝ちゃん言うな!このハムスター!」


「ハムスター!?」


言い合いを中断しようとやってきたのはこのクラスの人気のある女子である雨宮幸あめみやゆき


運動が苦手だが頭が良いうえに可愛らしい顔立ちと体格からクラスのマスコットと認識されている女子生徒、そして彼女は東堂孝也の幼馴染とのこと。


その二人の言い争いは教師がやってくるまで続いた、俺はちゃっかり東堂を雨宮に押し付け本を読んでいた、とだけ言っておく。


今日は見事なお昼寝日和なせいか授業中に寝入る者もいくらかいるなか授業が終わり、教室から教師が出ていくと同時に騒がしくなる。


本当普通の光景、そんな光景の中に異物が入り込むまでは・・・・・・。


その異物とは、紫色の魔法陣。


それが目に入った瞬間、鞄を急いで肩にかけそして窓に全力疾走して勢いよく・・・・・・。


「早まるんじゃねえ!」


「孝ちゃん何やってるの!?」


「こいつが窓から飛び降りようとしやがったんだよ!!」


「何やってるの識乃くん!ここ一階じゃなくて二階なんだから!」


俺は確実に輝きを強くしていく魔法陣を見て厄介ごとだと思っていたため東堂が止めて来た事に本当に苛立っていた。


そもそも俺に飛び降りるつもりはなく比較的太く人が乗っても問題ない木の枝があったためにそこに避難するつもりだったのだから。


まあ……どのみち手遅れだったから素直に諦めるか。


「だ、誰か開けてくれ、おい!おい!」


「なんなのこれ!!」


「皆落ち着いてくれ!そしてそこも飛び降りようとするな!」


扉を叩き助けを求める生徒や常識から外れた事態に困惑する生徒、それを収めようと声をかけるこのクラスの委員長である葉波忍はなみしのぶの声が教室に響く。


俺への注意も忘れていないのはある意味さすがと言える、この事態の中でそれだけ回りを見ているという証明だからな。


……というか俺に変なフラグを作らないでくれ、と言いたくなったなアレを思い出したら。


昨日渡された異世界召喚物のライトノベルの存在を思い出し、俺を含めた教室にいた奴は紫色の光に包まれる。本当こういう面倒なのはごめんなんだがな……。




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