第七章 天使強襲 11
エルシーと名乗る『あの黒猫』からの一方的なテレパシーは、天力を扱うための知識と敵である天使の情報を授けてくれた。
桃原は白花から簡単に説明を受けていたので、大部分はすでに知り、体験もしていたが、有益な情報ももちろんあった。
「未だ『天力の奇跡』と言われる能力が発現していなければ、作ればいい……ね」
四足天使が落とすつららを避け続けながら、桃原はエルシーの言葉を思い返す。
既存の物理法則に囚われず、自らの頭で創造する、奇跡とも魔法とも呼べる力。
そして、自分がその能力を使っている姿が自然に想像できるようなものがいとも言っていた。
「あいつを倒すなら、安直に炎がいいかもしれないけど……。あの氷を溶かせるイメージが湧かないし、竹刀に炎を纏わせて燃えちゃっても困るし……。そもそもあいつの氷って……」
その時、桃原はつららの雨が止んだことに気がついた。急いで上空の四足天使に視線を向けると、その周囲が月明かりによってキラキラと輝いていた。
「あれ……は……?」
桃原は戦慄した。
形がはっきりと確認できないが、それが氷の結晶だと認識できる大きさであれば、人間の拳骨程度の大きさだろうか。
だが、桃原が恐怖するのは大きさでは無い。
数えるのが愚行であったと瞬時に思えてしまう程の速度で増えていく氷塊。それが、瞬く間に夜空を埋め尽くしていく。
桃原には数秒後の街の様子が容易に想像できた。
「やばいっ……!!」
咄嗟に身体が動き、白花の前に跳ぶ。
「白花さん!! そのまま私の後ろに!!」
「桜ちゃん……。桜ちゃんなら逃げられ」
「そんな事できるわけないでしょう!!!!」
桃原は白花の声を遮り叫ぶ。
次の瞬間、四足天使が大きく羽ばたくと氷の絨毯爆撃が開始された。




