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幸せは、その手の中に  作者: 散華にゃんにゃん
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第六章 全人類の道標 5

 桃原は、警官から簡単な事情聴取を受けた程度で解放された。

 正当防衛として認められたからだが、実を言えば、警察としても能力者の扱いをどうすればいいのかわからないのだ。

 アメリカで開かれるという、各国首脳が集まる会議で何かが決まるまで待つしかない。

 白花と片山を含め、居合わせた人々が聴取を受けていると、強盗が厳重な警備の中護送されていった。

 これで、能力者による銀行強盗事件は幕を閉じた。


 桃原が警官達から離れた白花に近づき、尋ねる。

「あなたは、一体……? なぜ私が能力者だと?」

 白花が微笑みながら答える。

「私は、白花 瞳。私も能力者なの。天力が見えるだけなんだけど、それであなたを見つけたの」

「私は、桃原 桜です。白花さんは天力について詳しいようですが?」

「全部教えてもらっただけだけどね」

 そう言いながら、白花は桃原の耳元で囁く。

「内緒だけど、あの黒猫ちゃんにね」

「それって……!?」

 それが、テレビで天力や天使について語った黒猫の事であることは桃原にもすぐわかった。

「黒猫ちゃんに言われて、強い能力者を探しているの」

「先程もそう仰ってましたけど、何のためにですか?」

 白花は少し離れがら笑顔で言い放つ。

「天使から世界を守るためだよ! 桜ちゃんも手伝ってくれる?」

 桃原は息を飲んだ。

「え……? あ! すみません! 部活に行かないといけないので!」

 一礼して立ち去ろうとする桃原を慌てて呼び止める白花。

「え!? ちょっと待って! 連絡先だけでも!」

「ごめんなさい!」

 そう言って、桃原は走り去ってしまった。


「そんなぁ……。折角見つけたのに……」

「いきなりあんな事言われたら仕方無いでしょ? 悪徳な勧誘にしか聞こえないよ」

 溜息交じりに片山が諭す。

 片山は白花の顔を見ながら、それがいつもの白花であることに安堵していた。

 桃原に向けて天力について語っていた白花の雰囲気に違和感を感じていたのだ。

――まるで、何かに憑りつかれてたみたいだったな……


 桃原は、走りながら考えを巡らせていた。

「天使……。世界の……平和……」 

 桃原は、テレビで見たモンゴルの映像を思い出していた。

 破壊された町並み。

 大勢の犠牲者。

 その元凶である、天使と呼ばれる化け物。

 桃原は、部活に行くと言って白花から、否、現実から逃げたのだった。

 ただの高校生であった桃原には、あの非常の中に身を投じることは恐怖でしかない。

 先程は、相手が人間だった事と、無我夢中であったため何とかなったが、得体の知れない化け物と戦うとなれば話は別だ。


――きっと、他の能力者が何とかしてくれる


 桃原 桜は変わらぬ日常を送れるものだと思っていた。

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