第六章 全人類の道標 2
銀行強盗1人に対して、警察官が8人。
しかし、誰1人動けない。
人質を盾にされているため発砲もできない。
そして、右手の電信柱で殴られようものなら絶命必至である。
何より、強盗に握られたコンクリート製の電信柱に、5本の指が食い込んでいる事が、恐るべき怪力であることを示している。
その力が左手に込められれば、人質となっている女子高生の足がどうなってしまうかは考えるまでもない。
「オラオラァ! 退けって言ってんだろ!?」
強盗が電信柱を軽々と振り回すと、堪らず警官達が後ずさる。
そして、強盗がゆっくりと前進した事で、銀行内の人間達の緊張が解ける。
「はぁー……、とりあえず解放されたか……」
片山が隣に目をやると、いつの間にか白花が立ち上がっていた。
「まだだよ。あの子を助けないと」
「あの子って、あの高校生? 助けるったって、あんた戦えないんでしょ? 可哀相だけど、どうにもできないじゃん……」
すると、白花が片山に笑顔を向けた。
「大丈夫だよ」
白花はそう言うと、小走りで出口へ向かっていった。
「ちょっ……!? 瞳!」
何がどう大丈夫なのかは片山には解らなかったが、自然と後を追ってしまった。白花の事を放っておけないのは、昔から変わらない。
銀行から出た白花が、強盗の後ろから声をかける。
「すみません! ちょっといいですか?」
強盗が気付いて、振り返った。
「あぁ!? なんだお前は! 殺されたいのか!?」
白花は臆さず話しかける。
「あのー……、私、強い能力を使える人を探してるんですけど」
「あぁん?」
強盗が怪訝な顔をする。
「ちょっと!? 何考えてるのあんた!?」
片山が白花の肩を慌てて掴む。
周りの警察官達も驚き、白花達にその場から離れるように促している。
しかし、白花は動かない。
「なんだお前? 俺の仲間にでもなるってか? あっはっはっは! いいぜ。この力があれば警察なんて怖くねぇからなぁ!」
強盗が高笑いすると、白花が首を傾げて呟いた。
「あのー」
「なんだ? 金がほしいのか? 復讐したいやつでもいるのか?」
「犯罪者のおじさんには用が無いんですけど……」
「「は?」」
片山と強盗の声が重なった。
片山も強盗も、白花の言葉の意味が解らなかった。
白花が再び話かける。
「強い力を見つけてここまで来たんですけど。まさか、その力の持ち主が人質にされてるなんて思わなかったですよ」




