第六章 全人類の道標 1
「はぁ……」
「どうしよう……」
溜息を付いたのは片山 都、その隣で怯えているのは白花 瞳だ。
「全部エルシーのせいだ」
「エルシーちゃんを悪者にしちゃダメだよぅ……」
二人はお互いにだけ聞こえるような小さい声で話している。
「天力の事を広めたのも、『できるだけ力の強そうな能力者を集めておいて!』とか言って私達を置いてったのはあいつじゃんか」
「エルシーちゃんも色々と大変なんだよ」
二人を含め、数人が体育座りをしている。
「あんただって能力者なんでしょ? どうにかできないの?」
「私は今のところ、他人の力を感じることしかできないから……」
周りに座っている人々は無言だが、外は騒がしい。
「その力が原因でこんな所にいるんだけど……」
「だって、大きい力を見つけたから……。それがまさか……」
白花が言いかけると、怒号が飛んできた。
「誰だ!! ごちゃごちゃ喋ってるのは!? 喋るなって言ったろうが!!」
二人は口を閉じ、声のする方を恐る恐る見た。
規則的に並んだ椅子。
広い部屋を仕切るように配置されたカウンター。
カウンターの奥には、同じ服装の女性が数名。
元々はガラス張りであったが、今はシャッターが下りているので少し薄暗い。
一カ所だけはシャッターが下りておらず、声の主はそこから外に向かって叫んでいる。
二人がいるのは、銀行だ。
そして、怒鳴り声を上げたのは、銀行強盗である。
しかし、拳銃も刃物も爆弾も持っていなかった。
その男が軽々と持っているのは、通常であれば考えられないもの。
男は、銀行を取り囲む警察を威嚇した。
「こいつだけじゃねーぞ! てめーらも命が惜しかったら道を空けろ!!」
男の左手が握るのは、金の詰め込まれたバックを抱えた女子高生の左足。
男の右手が握るのは、折れた電信柱。
銀行強盗は、紛れもなく能力者であった。




