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幸せは、その手の中に  作者: 散華にゃんにゃん
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第五章 二つ目の器 4

 雨塚は冷静になり、一つ気になった事を聞く。

「ホタルは……。黒姫 蛍は、もういないのか?」

 この白い世界、雨塚の精神世界に黒姫 蛍の姿は無い。

「光さんがホタルさんに振り分けた天力、その全てが霧散してしまったのは確かですね。でも、同じ量の天力を得られれば『器』として復元も可能かと」


 雨塚は少し安堵した。エルシーもハルカも『魂』という言葉を使っていたが、その消滅とは『死』と同義であろう。雨塚が生み出したとは言え、ホタルもまた自我を持っていた。そんな存在が消えてしまったという事実が胸を痛めた。

 そして、『死』について考えた事で、雨塚は天使達に殺された人々を思い出した。同時に、ある可能性が頭をよぎった。


――この力を使えば……みんな……


 雨塚が考えを巡らせていると、ハルカが釘を刺した。

「それはダメです」

「え?」

「死んだ人間を生き返らせる事はできません。莫大な天力を使ってそれを成そうとしても、それは最早、その人間を模した別の存在でしかありません」

 ハルカは雨塚の考えていた事を把握していた。

 雨塚が頭で考えた事は、その器であるハルカにも伝わるのだろう。


 しかしながら、ハルカの言葉に雨塚は矛盾を感じた。

「さっき、天力については俺が知っている事しか知らないって言ってなかったか?」

 ハルカは呼吸を整えてから話し出した。

「それは、光さんが私にその力を込めようとしたからです。私が持つ力は、私自身が良くわかりますので。不可能な事も、です」

「俺が込めようとした、力?」

「光さんがここでエルシーさんと話した後、『天使を倒す』ための力を込めて、一つ目の器を完成させました。それが、戦う事に特化した『黒姫 蛍』」


 雨塚はその時の事を思い出す。

 あの時、確かに雨塚は天使を倒す事を一番の目的としていた。元々、雨塚の小説の中の『黒姫 蛍』も、戦闘を得意としていたので、自然とイメージが固まったのだった。


「そして、中級天使の自爆行為でホタルさんが消滅した時、光さんは、二つ目の器である私を完成させようとしました。しかし、私は器として完成せず、今こうして光さんと私の魂がここにあるのです」

「それは、もしかして……『死にたくない』って思ったからか?」

 雨塚は答えに辿り着いた、と思っていた。

 しかし、ハルカは呆れたように笑った。

「その方が良かったかもしれませんね」

「違うのか?」


「光さんはあの状況下で、私に『犠牲となった人々を生き返らせたい』という願いと力を込めようとしたんですよ。素晴らしい事だと思いますが、お人好しというか何と言いますか」

 ハルカは続ける。

「天力には奇跡を起こす力があるようですが、死者の蘇生が不可能だったので、このような状況になってしまったのです。入れ物としての私の身体は現実世界に、魂はここに。長くなりましたが、光さんのすべき事はもうわかりましたよね?」


 確かにホタルは、ウランバートルを襲った天使達を駆逐した。

 しかし、雨塚はそれで終わりだとは思っていない。

 あの『赤い結晶体』。あれがある限り、世界が平和を取り戻す事は無い。


「『蒼澄 遥』」

 静かに、その名を呼ぶ。

「はい」

「俺は、みんなを守りたい」

「それが光さんの望みであれば。私はそれを叶えるために生み出されたのですから」


 雨塚は、蒼澄 遥の魂と共に、現実世界へと帰還する。

 二つ目の器『蒼澄 遥』に込められたのは、人々を、地球を、世界を守るための力。

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