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幸せは、その手の中に  作者: 散華にゃんにゃん
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行間 平和を望んだ少女 9

 白い化け物が光の粒子となり、夜空に溶けていくのを確認したリルは、再び湖を目指した。

 先程、徒歩で十分程かかった道のりを、僅か一分程で駆け抜ける。


 眼前に赤い結晶を見据え、リルは立ち止まった。

 不気味に輝くその物体は、やはり、リルが目覚めた力、白い化け物が持っていた力と同じ感じがした。

 リルはそれを破壊しようと、右手を向け、力を集める。


 その時。

「リル……お姉ちゃん……?」

 聞き覚えのある声に驚くリル。

 目を向けた先には。

「ルミアちゃん!?」

 リルの一つ年下で、村民の中でリルと最も年が近かったため一緒によく遊び、一緒に育ってきた女の子だ。臆病で優しくて甘えん坊で、リルにとって友達でありながら妹のような存在だった。

「ルミアちゃん! 無事で良かった! アレットおばあちゃんと、ナ……タン……は?」

 リルは話しかけながら、ある違和感に気付いてしまった。

「どうしたの? リルお姉ちゃん。 わたし何かおかしい?」

 ルミアの容姿は特に変わっていない。ナタンのように身体の一部が無くなっている様子も無い。


 ただ、心臓の鼓動を感じられなかったのだ。

 まるで、あの白い化け物のように。


「あなたは……ルミアちゃん……なの?」

 ルミアのウェーブのかかった長い赤毛が揺らめく。

「何を言っているの? わたしはルミアだよ?」

 何かの間違いなのか、リルが答えを探し考えを巡らせていると、ルミアが満面の笑みで発言した。


「リルお姉ちゃんも天使様の御加護を受けたんだね!」

「え?」

 リルにはルミアの言っていることの意味がわからなかった。

「わたし達は選ばれたんだよ! 天使様が教えてくれたの! この世界は神様が気まぐれでつくった世界で、今日で終わりなんだって!」

「ルミアちゃん……? 何の話をしているの?」

 意味不明な事を明るく言うルミアに恐怖を抱くリル。

 ルミアは意に介さずに続ける。

「今日、この世界の人間はみんな死ぬの! そして、選ばれたわたし達は、天使様達と一緒に神様の世界に行けるんだよ!」

 ケタケタ笑い出した少女は、最早、リルの知るルミアでは無かった。 

 何かがルミアに取りついてるとしか思いたくなかった。

「ルミアちゃん! どうしたの!? しっかりしてよ!」

 リルが叫ぶと、ルミアの目が鋭くなる。


「どうかしてるのは、リルお姉ちゃんの方だよ?」


 その声は、冷たく、憎しみが込められていた。

 聞いたことのない友の声に怯み絶句したリル。

「天使様にこの力を分けてもらっておいて……、どうして天使様を殺したの?」

 ルミアの言葉で、リルは理解した。

「天使様って……」

 リルが呟くと同時に、ルミアの背後、赤い結晶の周りに、白い化け物が複数体現れた。

 村を襲った化け物とはそれぞれ違う形態をしていた。

 しかし、全ての化け物に共通して、頭上に光り輝く輪が浮いていた。

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