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幸せは、その手の中に  作者: 散華にゃんにゃん
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行間 平和を望んだ少女 8

 リルは白い化け物を見つめる。

 父だけでなく、恐らくは母を、村のみんなを殺め、村を燃やした元凶。

 その化け物は、不思議な力を集中させ、右腕を復元していた。

 人智を超えた力を持つ、未知の存在。


「あれは……何……?」

 リルはその白い化け物に対して、人間とも、他の動物とも違う印象を得た。

 十歳のリルが持つ常識では、『生きている』という事は、『心臓が動いている』と同義であった。しかし、あの白い化け物から心臓の拍動を感じなかったのだ。


 自らの異変に気付いていたリルは、左胸に手を当て確かめる。

 心臓は、動いていた。

 どうやら自分は『生きている』ようだ。


 村の人間や騎士達を肉塊に変えた化け物の攻撃に耐えた身体。

 化け物の放った火球をかき消した力。

 そして、離れた距離にいる対象の鼓動を『感じない』という感覚。

 その全てが、自分自身が普通の人間で無くなってしまったのだと思わせた。

 加えて、リルは自らに発現した不思議な力が、天使の持つエネルギーと同質の物だと感じていた。


 リルはあの白い化け物と同等の『化け物』になってしまったと考えていたが、あの化け物との違いを見つけることで自分が『人間』であると思いたかったのだ。


「わたしは……どうしたらいいの?」

 なぜ、こんな力に覚醒したのか。

 なぜ、あの化け物が現れたのか。

 なぜ、村が焼かれ、みなが殺されたのか。

 なぜ、父と母が……。


 ふと、リルは自分と白い化け物以外の大きな力を感じた。

 その力の発生源を向く。

「あっちには……」

 その方向には先程までリルがいた湖がある。

 思い当たる事は。

「あの……赤い塊……?」

 湖の方から感じる力は、目の前の白い化け物とは比較にならない程強大であった。

「あんな力が使われたら、もっと悲しいことが起きちゃう……」


 その強大な力に危険を感じたリルは走り出した。

 自分に何ができるかはわからないが、どうにかしなければならないと思わされた。

 その時、湖へ向かうリルに向け複数の火球が放たれた。

 その1つ1つに莫大な力が込められた、白い化け物の攻撃。

 だが、リルはその全てを、不思議な力を凝縮した両の手で払い落とした。


 赤く染まる月の下、リルは空中の化け物に視線を向ける。

 その視線には、怒りと憎しみと悲しみが込められていた。

「邪魔しないで」

 リルは、右手を白い化け物に向けて呟いた。


 次の瞬間、リルが放った光の矢が白い化け物を容易く貫いた。


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