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幸せは、その手の中に  作者: 散華にゃんにゃん
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行間 平和を望んだ少女 5

「い……いや……」

 びちゃん、という音が響く。

 腰を抜かしたリルが、その場に座り込んだのだ。


 そして、リルは気味の悪い感触を得た。

 生暖かく、ドロリとしたその水溜りは、今まで回りの炎で気が付かなかったが、赤い色をしていた。

 これ程の量を見たことは無かったが、すぐに理解した。

 この赤い色をした液体が、人間の血液であると。

 そして恐らくは、母の。


「いやああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 リルの声帯と涙腺が決壊した。


 その時。

 ドスンッ! という音が聞こえ、肝をつぶしたリルが音の方向へゆっくり目を向ける。

 そこには、鎧姿の人間が横たわっていた。

「な……何……?」

 先程まで何も無かった事を考えると、どこからか飛んできたのだろうか。


 リルはその人間が王国の騎士であることに気付いた。

 村の大人達が外に仕事に行く日にやって来る王国騎士団を何度か見たことがあったのだ。

「まだ村に……? でも、なんで?」

 騎士は微動だにしない。そして、騎士の周辺の地面が少し抉れている。

 まるで、遠くから投げ飛ばされたような痕跡。


 リルが耳を澄ますと、村の中央から金属音が聞こえた。

「まだ……、誰かがいる?」

 そこで、ある可能性が頭をよぎった。

 騎士団がまだ村にいるということは。

「お父……さん」

 父もまだ村にいるのではないか。


「お父さん!」

 すぐにでも、会いたい。

 リルは立ち上がり、数歩歩いて振り向いた。

「お母さん……。後で……お墓作ってあげるからね……」

 母がいたのであろうその場所でそう告げてから、走り出した。


 走りながら涙を拭う。

「お父さん……お父さん……お父さん……」

 家々を燃やす炎が弱くなっていくのを横目で見ながら走り抜ける。

 金属音はもうしていないが、方向は合っているはずだ。

「あそこを曲がれば……」

 そこに父がいる確証など無かったが、誰かがいることは間違いない。

 だが、角を曲がったリルの目に飛び込んできた光景は想像から大きく外れたものだった。


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