行間 平和を望んだ少女 4
リルが目を覚ますと、周りの風景がガラリと変わっていた。
どのくらいの間気を失っていたかはわからなかったが、無事に生きていたようだ。
リルの周囲には、大人の身長くらいの小さな赤い結晶が地面から無数に生えていた。そして、空から落ちてきた物体は、村の見張り台程度の高さを地上に残してそびえ立っており、その赤い結晶の周辺には空気中に赤い粉が漂い、バチバチと赤い光を放っていた。
リルは、どこか違う場所に来てしまったのかと思い辺りを見渡したが、湖はそのまま存在していて、ここまで一緒に来た三人が倒れているのも確認した。
すぐに、一番近くに倒れているナタンに駆け寄る。
「ナタン! 大丈夫?」
無事を確かめようと、ナタンの肩に触れた瞬間。
パキンッ、という音と共に、ナタンの身体がリルの触れた箇所を中心に赤い光の粒子となり、壊れた。
「えっ?」
リルは唖然とした。
ナタンは動かない。
「ルミアちゃん! おばあちゃん!」
大声で呼びかけるが、二人ともピクリとも動かない。
呆然とするリルであったが、パニックにならない程度に冷静であった。
「みんなを呼んでこなきゃ!」
リルは村を目指して走り出した。村の大人達に助けを求めなければならない。
そして、走り始めてすぐに違和感を覚えた。
「村の方も……赤い?」
辺りは少し薄暗く、異変にはすぐ気付いた。
しかし、それが先の赤い粒子で無い事は村に到着してやっと気が付いた。
村の家々が、燃えていたのだ。
リルは自分の家の前で立ち尽くした。
「お父さん……? お母さん……?」
二人の姿は無い。
我に返り家の周りを走りながら両親を探した。
「お父さーん!! お母さーん!!」
できるだけ大声を出して二人を呼んだ。
その時。
びちゃっ、と水溜りに足を突っ込んだ。
リルは数歩先で立ち止まり、妙な引っかかりを感じた。
――雨なんて、降ったっけ?
恐る恐る振り向いたリルは、水溜りの中に何かを見つけた。
びちゃっ……びちゃっ……と、音を立てながらそれに近づく。
落ちていたものが何なのか認識した時、リルの心臓は止まりそうになった。
言葉が、出てこない。
見間違う筈が無かった。
それは、リルを毎日抱き締めてくれた、優しい母の『腕』であった。




