行間 平和を望んだ少女 2
「ごちそうさまでした!」
家族三人での昼食を終え、リルはお腹も心もいっぱいであった。
そんなリルに父が告げる。
「リル、今日からお父さんはまたお仕事で外に行かなくちゃいけないんだ。だから、お母さんの言うことを聞いて、良い子にしてるんだよ」
「えー! また外のお仕事なの……?」
「ごめんな、リル」
「今度はどのくらいかかるの?」
リルの質問に、父は困った表情をした。母はずっと俯いたままだ。
「わからない……。けど、必ず帰ってくるから……」
「うん。いいよ! お父さん嘘付いたこと無いもん!」
リルは父を心配させまいと明るく振る舞ったのだが、空気は重たいままだった。
リルは知らないのだ、父が言う『外の仕事』の内容を。
「お父さん達は準備で忙しいから、また友達みんなで湖に遊びに行きなさい。アレットさんには言ってあるから」
「はーい……」
父を含めた村の男達が『外の仕事』に出発する時はいつも、リルくらいの歳の子は、アレットばあさんに連れられ、近くの湖に遊びに行くのだ。
本当は十歳を迎えた村の子供には、『戦争』について教えたのだが、リルの両親は言えずにいた。
人間を殺しに行く父の姿を、娘に見せたくなかったのだ。
リルが生まれた時代は、後に『百年戦争』と呼ばれる、フランスとイギリスの長きに渡る戦争、その真っ只中であった。
重苦しい雰囲気を壊したのは、ノックの音だった。
「クレールさんや、リルちゃんを迎えに来ましたよ」
隣に住むアレットばあさんであった。
「アレットさん、リルをお願いします」
「はいよ。クレールさんも気を付けてな。行くよリルちゃん」
「うん……。お父さん、早く帰ってきてね!」
両親の顔は笑顔ではあったが、リルは何か悲しい気持ちを抱いた。




