行間 平和を望んだ少女 1
「リルー。もうすぐお昼だからお父さん呼んできてー」
「はーい! ねぇ、お母さんお母さん! お昼ご飯は何―?」
満面の笑顔を母に向ける子供の名は、『リル』。
先月十回目の誕生日を迎えたばかりの少女だ。
「今日のお昼は、リンゴとイチジクのパイよ」
「本当に? やったー! すぐにお父さん呼んでくるね!」
「あんまり急いで転ばないようにね」
「はーい!」
リルは元気いっぱいに家を出た。一日の中で最も高い位置にある太陽が眩い光を放ち、リルは右手で日を遮る。
「今日もいいお天気!」
早速、父が作業をしている畑へ向かい走り出す。
「リルちゃんは今日も元気だねえ」
「アレットおばあちゃん、こんにちは!」
「おう、リル! クレールの旦那の所に行くのか?」
「そうだよー! ジェフおじさんまたね!」
すれ違う村人はみんな知り合いだった。それもそのはず、このシストール村は人口四十人程の小さな農村であるのだ。
ここは十五世紀のフランス。イギリスとの戦争中ではあるが、辺境の田舎は比較的平和であった。
村の外れにある畑にはすぐに到着した。
「お父さーん! お昼だよー!」
「リルか。すぐ戻るよ」
「早く早くー! お母さんのパイが冷めちゃうよ!」
「ははは、わかったわかった」
少女の毎日は幸せで溢れていた。ずっとこんな日が続くのだと思っていた。
だが、日常の終わりは、唐突にやってくる。




