第四章 新たなる日常へ向かう世界 2
エルシーは早くも路頭に迷っていた。
「テレビ局ってどこにあるのー?」
魂だけの存在であったエルシーは、例えるなら、世界地図から任意の場所を選び、その風景を見ていたようなものだ。『移動する』という概念も無かった。
「せめて場所だけでも把握しとくべきだったなー」
黒猫の肉体を借りて、この世界に存在できるようになった半面、一生物としての窮屈さを痛感していた。
そんな時、2人の女性の声が耳に入ってきた。
「都ちゃん! あの猫さんからものすごい湯気が出てるよ!」
「分かってから、早く病院に行くよ!」
白花 瞳は、突如見えるようになった白い湯気が気になって仕方が無かった。
片山 都は、白花を眼科と精神科のどちらに連れて行こうか本気で悩んでいた。
エルシーは、片方の人間が天力に目覚めているのだとすぐに気が付いた。
「道を尋ねつつ、この力について教えてあげますかー」
エルシーが近づくと、白花が口を開いた。
「あれ? この猫さん、小さな女の子にも見えるよ? あれ?」
「何バカな事言ってるの? 正気に戻ってよ、瞳!」
天力の見えない片山は心の中で、目的地を精神科に定めた。
エルシーは、絶句していた。
偶然出会ったこの女性は今何と言ったか。この黒猫の姿を見て、確かに『女の子』と言った。いや、メスの子猫という意味である可能性もあるが……。
エルシーは、無意識に信じようとしなかったのだ。
この女性、白花には、エルシーが人間であった時の姿が見えている事を。
「あなたは、一体……?」
エルシーの口から言葉がこぼれた。
一拍の間の後、先に反応したのは片山であった。
「猫が喋ったぁぁぁぁぁぁぁ!?」
驚くのも無理は無いが、相方のリアクションは違った。
「やっぱり、普通の猫さんじゃないみたいだね」
白花は笑っていた。




