第四章 新たなる日常へ向かう世界 1
エルシーはホタルと天使達の消滅を感じ取っていた。
『一つめの器と相討ちか……でも、これで当面の危機は乗り越えたね。さすが雨塚君』
悲しみの色は微塵もない。
今の雨塚にとって、肉体の消滅程度些細な問題であると理解しているからである。
それに、雨塚には残り2つ『器』がある。
『奴等の再来が先か、雨塚君がこっちに戻るのが先か、それとも……』
エルシーはホタルと中級天使の死闘の最中、目的を果たすための第一歩として、ある者を探していた。
今、この瞬間にも世界中で能力者が現れ始めている。
結晶体の出現によって、天力を扱えるようになるという事例をエルシーは知っていた。
そして、今回の結晶体の大きさからその影響を受ける範囲が地球全体に及ぶ可能性を危惧していた。
だからこそ、能力者を含めた全人類に天素や天力、天使の存在を正しく伝えることが現状の目的である。
しかし、魂だけの存在であるエルシーの言葉は一般人に届かない。
全力を用いても、一言二言伝えるのが精一杯である。
特殊な覚醒を果たした雨塚とは接続できたが、普通の能力者とは簡単に会話等できない。
エルシーが探しているのは、エルシーの魂を迎え入れられる『器』として、相当量の天力を宿した能力者である。エルシー自身の口から伝えるためには、エルシーが肉体を持ち、この世界に存在しなければならない。
雨塚は、その膨大な天力を用いて『器』自体を創造したが、エルシーはそこまでの天力を有していない。『器』を探し出すしかないのだ。
そして、モンゴル、中国、北朝鮮、韓国と探してきたが、日本まで来てようやく見つけた。
「雨塚君といい、日本に縁があるみたいねー。体を乗っ取るみたいで申し訳ないけど、ちゃんと五体満足で返すからね!」
そう言いながら、エルシーはその能力者の魂へと介入した。
エルシーにとって何もかも懐かしい感覚だった。
風の匂いを嗅ぎ、空気の温度を感じ、重力を4本の足で支える。
だが、エルシーにはその喜びを噛みしめている暇は無い。
次の目的を果たさなければならないのだ。
「今の時代、手っ取り早いのはやっぱりテレビで喋る事かなー」
独り言を呟きながら、一匹の黒猫が歩き出した。




