第三章 恐怖切り裂く光の翼 8
ホタルは、中級天使の攻撃を思い出す。
「見えない程速いんじゃなくて……物理的に……見えない……?」
ホタルには中級天使の放った攻撃が微かにも捉えられなかった。
音速で飛行し、中級天使の腹部を的確に狙ったホタルに、だ。
であれば、天力を使い、天力での攻撃自体を透過させていると考えるのが妥当だ。
ホタルが自然にそのような発想に至ったのには根拠がある。
奴等は空間を裂き、突如現れたこと。
雨塚が天力を使って、ホタル達を産み出したこと。
そう、天力には、光の弾や槍での攻撃、身体強化以外に、既存の物理法則では到底説明のできない奇跡を起こす力がある。
むしろ、前者は天力の基本的な使い方であって、本質は後者なのかもしれない。
実は雨塚は、天力が起こす奇跡と呼べる事象については、ホタルの身体を再構築した時から想定していた。
ホタルは左手に視線を落とし、日本刀を確認する。
それは、普通の日本刀では無い。
ホタルと共に天力によって創られた武器。
「さて、殺し合いの続きをしましょうか」
静かに呟き、居合いの構えをとる。
そのままの体勢で中級天使目掛けて飛んだ。
気付いた中級天使も構える。視えはしないが、防御壁を展開しているだろう。
それを見越したホタルは中級天使の手前50メートル程で力強く踏み込む。
「『天創・無幻剣舞』。『壱の太刀』……」
全力の抜刀。
「『斬空』!!」
ホタルがそう名付けた剣が虚空を切り裂くと同時に、中級天使が何かを感じ取ったのか後ろへ跳ぶ。
次の瞬間。
ザシュ! っと、中級天使の右脇腹から左肩までが切り裂かれた。
「ヲォォォォォォォォ!」
中級天使が叫ぶ。
しかし、肝心の核に僅かに掠めた程度だろうか、浅い。
「おしかったですね……天力を感ずかれちゃったかな?」
ホタルは斬撃を飛ばしたのではない。任意の空間を斬ったのだ。
雨塚がホタルの能力として設定した、特殊な力を発現する武器を創る力『天創・無幻剣舞』。
これが、ホタルが扱う天力の奇跡。




