第二章 魂の邂逅 6
エルシーは雨塚の精神から離れ、魂だけの存在に戻っていた。
「さてと、私も出来ることをしないとね」
中級天使は雨塚が必ず倒してくれる。エルシーはそう信じている。
エルシーが危惧しているのはこれから起こる別の問題であった。
「これからどんどん増える能力者の中から、まずは私と接続できる人を探さないと」
天使は確かに人類にとっての脅威である。しかし、別の脅威の出現が予測できている。過ぎた力を持った人間の中から天力を悪用する者が現れることは必然であるからだ。天使の出現と天力の発現によって世界中がパニックに陥ることもわかりきっている。
エルシーは雨塚との会話を思いだし微笑む。
「不思議な人……近くにいたのがあの人で良かった」
エルシーが安堵したのは、雨塚が能力を我欲のために使う人間では無いからであろう。そして、雨塚は最後まで自分の身体の事について聞かなかった。自分の事など二の次で、本気で世のため、人のために天使を排除するつもりなのだと思わせられた。
雨塚は善人であると。
信用できる人物であると。
だからこそ、エルシーの魂が痛みを感じていた。
エルシーは魂だけの者の世界で一人呟く。
「ごめんなさい」