第二章 魂の邂逅 2
――天使? 人類が滅ぶ?
エルシーが明るく言い放った為、反応が遅れた雨塚。声色から動揺を感じさせる。
「ちょっと待ってくれ! 天使ってあの絵画や絵本に出てくる『天使』のことなのか? それにしたって、人類が滅びるなんて……」
「天使って呼び方は大昔に目撃した人間が付けたもんだし。あれが実在する天使だって納得してもらう以外ないね。まぁ、中級だの下級だのは私が勝手に区別しただけだけど。まぁ、あいつらが地球ごと人類を絶滅させる気なのは間違いないよー」
「なんでそんな事がわかる? それになんでそんなこと楽しそうに話すんだ!」
人類の滅亡。決して穏やかではない話題を楽しげに話すエルシーに雨塚は怒りを露わにする。
数秒の沈黙の後、話を再開したエルシーの声には反省の色が窺えた。
「ごめんなさい……嬉しい事があったから……。誤解しないで、私は地球のみんなを守りたい。その為にちゃんと説明するね。あなたには知っておかなければならないことが沢山あるの」
しおらしくなったエルシーに少し冷静になる雨塚。
頭の中を整理するためには話を聞くしかないと考えたが、一つ尋ねたい事ができた。
「エルシー。君は一体……? 神様ってやつなのか? それにここは……?」
「私は、長い間地球を見守ってきた魂だけの存在。そして、ここはあなたの頭の中にある世界。少しお邪魔させてもらってるよ」
「俺の頭の中?」
「あなたの体が大きく損傷したからね。今あなたは眠ってるような感じかな。あ、私は神様じゃないよ。そもそも神様なんかいないと思ってる」
雨塚には蒼澄 遥の表情が暗く見えた。エルシーの中で何か悲しみが蘇っている。神を否定するとしても、『神様なんか』という言葉を選ぶだろうか。エルシーが得体の知れない存在だとしても、心に踏み入る真似はできず沈黙する雨塚。
そんな雨塚を見て、エルシーは心の中だけで微笑んだ。
「それじゃあ順番に説明していくね」
自称地球の観察者は、少し声を明るくした。