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89.修学旅行という名の

修学旅行編、開幕です。



修学旅行当日を迎えてしまった。昼間の服は制服の着用となっているので着替え自体は多くないな。下着の代えも何とか間に合わせた。夜のパジャマも。ジャージでいいような気はしたのだ。


「余計な出費が」


「こういう時に見栄を張るのが女ってものよ」


未だにウジウジとしていたら晴海から助言が飛んできた。今更琴音に見栄が必要だとは思わないのに。見栄を張り、父に見て欲しい。そんなものはもういらない。


「その割には私と対して荷物の量が変わらないような」


「私は見栄を必要としていないからよ」


俺と晴海の荷物は他の女子達に比べて少ない。他の子達が一体何を持ちこんでいるのかも知りようがない。宮古は少しばかり多いか。同室だから後で知ることは出来るな。


「しかし何故にバス」


「定番じゃない。それに高速使えばそんなに時間も掛からないわよ」


そうなんだけどな。飛行機を使うほど距離は離れていないし、新幹線も然り。あっという間に着いたのでは学園側でも予定を組むのが大変だろう。特に空き時間を。


「時間は掛からないと言っても三時間は掛かりますよね」


「出発が午後からだからホテル直行だよね。初日はこんなものなのかな」


いや、朝に出発して昼に到着。そして観光というパターンもある。俺の時がそんな感じだったはず。移動も場所が遠かったから飛行機だったか。行先は何処だったか。


「北海道だったかな」


「中学校はそこ?」


「いや、イグジストの連中が」


当時も馬鹿な事をやっていたな。大荷物で現れた俺達に対して同級生達はまたかという反応。入学当初から問題児として有名だったからな。修学旅行に楽器持っていくような輩はまずいないだろう。


「本当に親しいわよね。ねぇ、私にもサイン貰ってよ」


「今度会いましたらね」


俺から頼めば断ることをしないからな。代わりに何かを要求されるが。貰ったベースを自慢したらそれはもう大変な騒ぎになった。これで一緒にバンドが組めるとか。今から乗り込むとか。


「それにしても本当に人気あるんですね。私からしたら信じられないのですけど」


「若者に人気のあるアーティストだから。ライブも派手だと聞いているわよ」


「あいつ等がやることですからね」


どうせアドリブで色々とやらかしているんだろう。現場スタッフの方々は大変な迷惑を掛けていることで心苦しいな。元メンバーとしては。馬鹿の歯止めは俺の役目だったから。


「でも有名人たちの学生生活ってちょっと興味があるわね」


「別に普通だったはずですよ。えぇ、ありふれたような」


すみません、大いに嘘をついている。クラスでの俺達の呼び名はまとめて新選組。黒歴史になっているのは別のが要因だ。ただ他のクラスメイト達もかなり濃いのが揃っていた。


「琴音、顔がかなり引き攣っているわよ」


「すみません、昔を思い出したらつい」


今まで以上に当時は馬鹿やっていた記憶がある。変な渾名がそれぞれに付いているとかおかしいだろ。他にも演者や女帝、隠者とか訳分からない連中もいたからな。


「プライベートなことは聞いたことがないけど、琴音と親しい時点で普通じゃない気がするんだけど」


「それを言ったらここにいる全員が当て嵌まるのですが」


「いや、話を聞く限り私達以上に親しいというか親友みたいに感じるじゃない」


「親友認定はされていますね」


僅か一か月位で。絶対にあいつ等、私が俺であることに気付いていると思う。話を振られてこないから俺からバラすことはしていない。しかし何で聞いて来ないのだろうか。


「あっ、すみません。メールが来たので」


『明日は何処に行くの? 私としては清水寺に行きたいんだけど』


「仕事しろ」


修学旅行に同行すると知ってからの晶さんの調子はずっとこんなものだ。仕事なのかプライベートなのかさっぱり分からないな。瑞樹さんは私服での行動が無いと知って落胆していたのだが。


「護衛の人?」


「テンション上がってしまって困っています。あの人達にとっては仕事がついでで観光が目的なような気がします」


「思うんだけど琴音って守られているイメージが薄いわよね。学園内だと生徒会に守られていた印象が強いけど、外だとね」


「大概の事は一人で出来ますし、危ない所にも行きません。行動がパターン化しているから大変楽だと言われていますね」


「海に行った時に関係は見たけど、殆ど友人同士みたいに接していたわね」


「そっちの方が私としては楽なので。変にかしこまられたり、へりくだったりされても困ります」


俺だからこそ成功した人選だろう。他の普通の令嬢だった場合は明らかに我慢が足りない人選。そもそも何故、晶さんはその職業を選んだのだろう。恭介さんはまだやっていけそうな気がするんだけど。


『黒糖堂にも行ってみたいわね。甘味が絶品らしいわよ』


「本気で仕事する気ないな」


『私達は琴音だから安心しているけど、他の面子なんてお通夜みたいに沈んでいるわよ』


護衛が付いているのは十二本家だけではない。霧ヶ峰さんや他の令嬢や子息にも。その人達にとって修学旅行というイベントはかなり辛いものになるだろう。主に精神的に。


「伍島さんに迷惑だけは掛けるなよ」


『私のメール相手見て頭抱えているわ』


護衛対象と気軽に連絡を取れるのが強みだよな。他の護衛達は連絡も取れない、姿も見せれない、何かあれば慌てて駆けつけないといけない。修学旅行ということでなるべく自分達はいないものだと相手に意識してもらう必要があるからだ。


「何で護衛が沈んでいるの?」


「対象から隠れつつ守るのは大変なんです。しかも今回は何処に行くのかは対象次第。事前準備も何もできない状況ですから後手に回ってしまいます」


「聞けばいいじゃない。琴音みたいに」


「私が特殊なんです。それに修学旅行で自分達が異物であることを理解しています。だからこそなるべく隠れて護衛する必要があると思っている筈です」


「それを聞くと琴音の護衛担当は相当に特殊ね」


全くである。自分が何処に行きたいのかを要望してくるくらいだからな。修学旅行でも接触することは許可しているし。観光名所へ行くのだ。人混みの中に紛れて見失われても困るからな。


「慣れればどうという事はありません」


「慣れでどうにかなるものなのかな」


それがなるんだよ。普通だと思えば異常さえ普通に思える。要は考え方なのだ。そうでもないと精神的にやられてきてしまう。苦労人ポジションの俺や女帝、委員長等はそれで乗り切ってきたのだ。


『文月の護衛から琴音に支援要請来ているけどどうする?』


「仕事しろと伝えろ」


「琴音ってメールだと素を出すのね」


「相手にもよりますよ。晶さん達にはもう素を出していいかなと」


付き合いの長さで言えば誰よりもだからな。俺が私となってからずっと傍で見守っていた存在でもある。今更素を出した所であまり驚かないだろうし、関係も良好だから。


「晶さんと一緒にいる恭介さんは琴音としてはどうなのよ?」


「苦労人ポジション」


「いや、異性としてよ」


「別に何とも。私に恋愛事を持ち込まれても困ります。自分の事よりも他人の事で精一杯なので」


「何々。恋愛相談は受けているの?」


あっ、余計なことを言ってしまった。本当に恋愛話が好きなようで。女子達が聞き耳を立てているのが分かる。だがこれを口外するわけにはいかない。俺と学園長が地獄を見る羽目になってしまう。


「黙秘権を行使します」


「誰と誰のことかも?」


「黙秘権を行使します」


「これは口が堅そうね」


言えるかよ。学園長と静流さんの恋愛模様など。何でそれに巻き込まれているとか説明するのさえ面倒臭い。最近は静かなものだが進展位は後で確認しておくか。あとで爆弾を投げ込まれても困るからな。


「でも今の琴音に恋愛相談とかその人は何を考えているんだろうね」


「恋愛事となった途端に首を出さないでください、宮古さん」


「大好物なので」


それよりだったら幼馴染の方を気に掛けてやれよ。脈ありなのは見ていて分かるのだから。この修学旅行で何かしら進展はあるだろうか。無理だな。宮古がそっちに行くとも思えない。


「私自身は恋愛に一切の興味はありません」


「それは告白イベントを見ていて思っていたけどね。琴音を落とせる人はいるのかな」


「いませんね。もしかしたら一生独り身かもしれません」


精神的にはまだ男性の部分が色濃く残っているはず。あくまで感覚の話だから違う可能性もあるが。琴音の影響も受けていて自分でも良く分からないのが正直な所なんだよな。


「それはそれで寂しくない?」


「どうなんでしょうね」


疑問形で返すしかない。男性と恋愛に至るとか考えただけで鳥肌ものだ。かといって女性と恋愛には至らない。精神的に中途半端すぎて自分がどちらなのか分からない。


「長月君は? 何か仲良さそうになったからさ」


「論外です。告白される前に振ってやりましたよ」


「いつの間に」


学園でのイベントではないから知らないのも無理ない。これを知っているのは二次会に参加していた十二本家だけだ。ついでに長月の好みも入手しているが誰か欲しい人はいるだろうか。


「長月さんは気難しそうなイメージはありましたが意外と面白かったですね。弄りがいがあって」


「琴音が?」


「いえ、私と葉月先輩、綾先輩の三人で」


「うわぁ……」


クラスメイト全員が何とも言えない表情をしているな。恐らく都合よく俺と葉月先輩が主で、綾先輩が乗ったのだと思っているが実際は全員が主犯なんだよ。


「本当に琴音は葉月先輩と仲がいいわね。この間も注目の的になっていたし」


「基本的に私は利用されているだけですよ。私も分かっていて乗っかるから事態がややこしくなるだけですけど」


「分かっているなら止めなさいよ。最近のトラブル関係は皆、十二本家絡みだと思われているんだから」


それはあながち間違っていない。やらかすのが葉月先輩で、被害者兼悪ノリ担当が俺。それに巻き込まれるように他が集まっているようなものだからな。来年になればそれも無くなりそうだけど。


「葉月先輩がいなくなればこんなことも無くなりそうですけど」


「どうだか」


信用が無いな。俺単体でトラブルが起こる事なんて少ないと思うのに。ただトラブルの種は大いに蒔かれそうなんだよな。主に双子関係で。あの二人が大人しくしていればいいのだが。


「来年の事を考えたら憂鬱になってきました」


「何があるのよ」


そりゃ双子の問題に、長月のお守が発生する可能性、他にも何かしら発生するかもしれない。それを考えるだけで頭が痛くなってくる。何で琴音になっても苦労人ポジションでいないといけないんだよ。


「うん、今を楽しみましょう」


「相変らず切り替え早いわね」


そうでもしないとやっていけないんだよ、目的地までまだ暫く掛かるけど、晴海や宮古やクラスメイトと喋っていたら時間が過ぎるのも早い。今夜、一泊する旅館に着いたのは夕刻であった。

現実でのネタが止まりません。

土砂降りの日にスマホ落下。衝撃で外れるカバー、飛び出すバッテリー。

慌てて拾って拭いて乾燥させて装着、無事起動。

安心してスマホを確認したらカバーが歪み、大変なことになっていることに気付きました。

とどめを刺したのは私です。機種変更を決意した瞬間でした。

次回に続くかも?

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